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私たちが直面する世界とその課題(1/2ページ)

評論家 與那覇潤氏

2025年2月21日 09時25分
よなは・じゅん氏=1979年生まれ。評論家。東京大大学院総合文化研究科博士課程修了。『中国化する日本』など話題書多数。公立大学准教授を病気離職の後、共著『心を病んだらいけないの?』で小林秀雄賞。
コロナ禍以降の世界の構図

今日の世界のおかしさを喩えた話として、こんな場面を想像してほしい。私自身が実際に、かつて体験した挿話にも基づいている。

あなたが精神的な不調を抱えて、メンタルクリニックを受診したとしよう。多くの場合、精神科医はなんらかの薬を出すだろう。しかし、いくら服用しても状態は改善せず、むしろ苦痛が悪化する一方であったとしよう。

あなたは当然、不安になる。薬が合っていないのではないか、診断された病名が違うのではないか、薬の副作用で新たな不調が生じている面はないか。そう疑って、インターネットを検索したり、一般向けの書籍に当たったりもするだろう。

しかしあなたが懸念を訴えても、医師がこのようにしか応じなかったら、どうか。

「症状がよくならないのは、薬の量が足りないからだ。改善しないなら前の倍飲み、それでも治らなければさらに倍飲めばいい。私は専門家だ。素人がネットで調べた程度でプロに逆らうな。私の方針を批判するなら誹謗中傷だ、名誉毀損で訴えるぞ!」

さすがにそれはない、とまともな人なら思う。しかし現に、まったく同じ構図がここのところ、ずっと世界で続いている。

はじまりは、2020年春からの新型コロナウイルス禍だった。欧米諸国が法的な強制と罰則をともなうロックダウン(外出禁止令)を敷いたのに対して、日本はあくまで自粛の要請に留まり、規制は緩かった。しかしウイルス流行の「第一波」と呼ばれた当時、日本の死者数は欧米よりはるかに低かった。

このことが意味するのは、「外出制限は有効な対策ではない」という事実だったはずだ。しかしその後、第二波、第三波……と続くにつれ、政府を支える専門家たちは、流行が収まらないのは「まだ自粛が足りないからだ」「もっともっと自粛すべきだ」と唱え続けた。

21年の春からワクチンの接種が始まると、彼らの理屈に「まだまだ打った人が少ない」「もっと速く、多く打たせろ」が加わった。mRNAという史上初のワクチンのしくみには不安も多く、実際に接種後の死者も出ている事実は、調べればすぐに分かった。しかしそうした違和感を表明する人には、「専門家を疑うな」「反ワクチンのカルトだ」「ネットに踊らされるバカだ」との罵声が浴びせられた。

22年の2月にウクライナ戦争が始まると、「専門家」のバトンは理系から文系へと渡された。しかし今度は、感染症医学に替わって国際政治学の識者が、連日メディアをジャックして同様のふるまいを示し続ける。

「まだ足りない」一本調子の論調

ウクライナがロシアに勝てないのは、「武器の支援が足りないからだ」「より強い兵器を、もっと多く送れ」の一本調子が、すでに3年近く続いている。実際にNATO諸国がウクライナに供給する兵器も、ミサイルから戦車へ、戦闘機へとエスカレートしてきた。しかし戦況は、ロシアの側に有利になる一方だ。

戦争が長引くほど、ロシア軍が前進し占領地を拡大する現状では、常識で考えてウクライナを応援する人ほど、「早く停戦した方がいい」と提言すべきだ。しかしそう主張するだけで、「お前は専門家じゃない」「ロシアのスパイなのか」と揶揄される状況は、開戦以来変わっていない。

日本独自の話題としては、22年7月の安倍晋三元首相の暗殺を機に、旧統一教会への社会的なバッシングが高まった。率直に言って、かつて行われた合同結婚式や高額の献金などに照らして、あまりよい宗教とは思えない。信じる人はむしろ、減ることが望ましい。

しかしどうやって、問題のあるカルトに入信する人を減らすかとなると、メディアの論調は「まだ叩き方が足りない」の一辺倒だった。もとより周囲からの偏見を覚悟で、異端的な教団に入った人が、法的な解散命令が出たところで信仰を棄てるはずはないが、そうなったら識者は「もっと弾圧を!」と叫ぶのだろうか。

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