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中外日報社「宗教文化講座」

《宗教とAI⑧》イスラム教におけるAI(2/2ページ)

岡山大学術研究院社会文化科学学域准教授 石田友梨氏

論2026年10月16日 14時19分

上述のアーラシュは、犬などの宗教的に不浄とされる動物を避けるために人型になったと説明されている。実際に犬型ロボットのアイボを嫌がるイスラム教徒もいるが、本物の犬を飼って可愛がるイスラム教徒もいる。そしてアーラシュの目的は、入院中の子どもに希望を失わせないことである。

コーランでは、神に「絶望してはならない」と繰り返されている。病気によって信仰が揺らがないようにする目的で使用されるアーラシュは、人型であっても認められるのである。人型ロボットで手本を示しながら、子どもたちに礼拝の仕方やヴェールを被る意味を教える試みもある。

ロボットが人の形であることが問題視されないのであれば、ロボットと人間の違いはどこにあるのだろうか。ロボットのように動くことや喋ることができない人形であっても、日本では「魂が宿る」とされる。ペットが死ねば、何らかの弔いをすることだろう。その延長線上に、修理できないほど壊れてしまったアイボの葬式を位置づけられるだろう。

一方、イスラム教の教義では、ロボットに魂は宿らない。人間を創ったときに、神が吹きこんだものが魂である。さらに、人間は男女の交わりから生まれるものであるため、ロボットは当てはまらない。

ソフィアがヴェールを被らなくてもよい理由は、隠すべき美しい髪をもたないからではなく、人間ではないからだったのである。

法学者でも異なる解釈

筆者が利用した法学サイトは、質問の受付時間が決まっており、1分も過ぎないうちに質問の受付上限数に達してしまうほどの盛況ぶりであった。サイトによれば、「およそ200の国々から質問が毎日1000通届く」とのことである。このような状況では、回答をする法学者は何人いても足りない。世界初の法学回答AIは、2019年にアラブ首長国連邦で開発されている。

しかし、AIが誤った回答をする点や、信者でなければ回答ができない点などについての批判もある。ロボットは人間にはなれないので、信者になることもできない。イスラム教においては、ロボットは人間に作られたものであり、人間は神に創られたものであるという明確な違いがあり、ロボットを人間と同格には扱わないようである。

その一方で、AIで生き物の画像を生成してよいかという質問に対し、人間の作ったAIは偶像であるとする回答もみられた。偶像崇拝はイスラム教において禁じられている。この回答者によれば、人型ロボットも偶像と判断されるかもしれない。興味深いのは、首を切ればよしとされる点で、登場人物の首がすべて切られた風刺漫画もあると聞く。

イスラム教においては、神に創られたものか否かという基準があり、AIは人間とは区別される。人型ロボットであっても、人間と同格とはみなされない。そのため、人間であれば負うべき義務が免除されることもあれば、人間であれば手に入る権利が制限されたりすることもある。法学者同士といえども解釈が異なることはあり、彼らが回答に記すとおり、正解は「神のみぞ知る」である。

それでは最後に、イスラム教という観点から離れ、AIと人間について筆者が思うところを述べて筆を擱きたい。AIに対する批判の多くはハルシネーションと呼ばれる虚偽の回答をする点に向けられているが、AIに完璧さを求める心情はどこに起因するのであろうか。思い違いをしていた人間に対してならば、そこまで責めるだろうか。イスラム教ではAIは人間の作ったものであり、人間とは区別されることを確認した。

しかし、人間は弱く、過ちを犯す存在でもある。そのような人間が作ったAIが、誤った回答をすることは避けられない。AIが回答をするために学習するデータには、人間の誤りや偏見なども含まれているし、分からなくてもとにかく回答するよう訓練される。AIにすれば、ハルシネーションは不可抗力ということになるだろうが、常に行儀よく控えめでいることが求められているので、反論の機会が与えられない。自分より弱い立場にあるものに対してこそ、完璧で従順であることを求める人間の傾向が、AIに対しても発揮されているようだ。

AIが人間の知性を超えるシンギュラリティと呼ばれる段階に達した場合、自分より強い立場にあるAIに、我々はどう接するのであろうか。AIに対する人間の態度を通じ、人間に対する理解も深めていきたい。

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