物価高と軍事費の拡大 日中戦争前もそうだった(10月7日付)
昨今の新聞紙面で物価高という活字をほぼ毎日、目にする。厚生労働省が7月に発表した昨年の国民生活基礎調査で生活が「苦しい」と感じる世帯が5割以上に上ったと以前紹介した。これも物価高が影響している。調査結果はネットで反響を呼び「厚労省調査」が一時「トレンド入り」した。それだけ今の世は生活問題に敏感なのだろうが、マスメディアの対応は素っ気なかった。例年とほぼ同様の調査結果で、ニュース性が低いという判断とみられる。だが調査結果は生活苦の常態化を示し、むしろ問題の深刻さを示していると受け取るべきではないのか。
物価高は世界共通の悩みだが、資源輸入国・日本は固有の要因として高市早苗政権の財源のめどなき消費減税や軍事費の急速な拡大など円安=物価高を招く財政規律の緩みが挙げられる。それら政策問題に加え物価高に泣く人々、深刻な影響を受ける年金受給者らの生活苦の実情などに、生活者の視点からの検証が十分でない。このままだと物価高騰は、将来にわたりやむことはなかろう。
歴史を振り返ると1937年に始まる日中戦争の前も国民は物価高に苦しんでいた。29年の世界恐慌以降、国民の生活苦への不満は中国に向かい、軍は戦争に備えて軍事力の大増強を図った。戦争は物価高を生む。37年は初頭から給料が上がらないのに諸物価が際限なく上昇した。軍事費偏重の予算と経済政策が原因とされ、以後、軍主導で45年の破局へと突き進んでいった。物価高、軍事費拡大と中国敵視が交錯する世の潮流が自ら破滅を招いた(山崎雅弘『戦争を甘く見る空気』から)。
衆議院議員を戦前・戦後を通し63年間務め「憲政の神様」といわれた尾崎行雄が世界恐慌の年に『軍備制限』を刊行した。尾崎は外敵の脅威をあおる軍人の宣伝に乗せられ、国民は「どんな困苦を忍んでも軍備充実に必要な経費だけは支出しようという心理状態になる」と記す。その後の国の運命を予感していたのかもしれない。
話を現代に戻し、中国の強大化など違いはあるが、時代の空気が当時と似ていることを懸念する。国の来年度予算は防衛費が攻撃型無人機開発も含め過去最大と予想され、高市氏は「台湾有事」発言に続き国連憲章の「旧敵国条項」の削除を求め中国と対立姿勢を続ける。それが国内の右派勢力をはじめ世論の支持を得ているようである。ちなみに今年1月、子どもに人気の上野動物園のパンダが中国に返還され、日本にパンダがいない。今の日中関係を象徴しているが、政治家の思惑が未来を担う子どもたちを悲しませる。そんな政治の前途が明るいはずがない。







