イラストでひもとく 仏像のフシギ…田中ひろみ著
イラストレーターで文筆家の田中ひろみ氏が、350を超えるカットを交え仏像にまつわる44の不思議に迫る。そもそも仏像とは何かといった由緒から、如来など仏像の分類、それぞれの特徴・歴史、制作過程といった概説、顔、髪、持物等、対象を絞った比較など、仏像に関する一通りの知識を親しみやすい表現で説く。
一つの話題を、文字とイラストで構成する見開きページで展開。図像などには漫画でよく見かける吹き出しを添え、印象的なフレーズで読者の関心を引く。十一面観音菩薩は「360度、全世界を見守ります」、不動明王は「いつだって燃えてるぜ!」と訴え掛けてくる。
語り方にも工夫が見られ、今の身近な話題を例に引く。アイドルグループAKB48になぞらえ「HTK(ホトケ)ユニット」と銘打ち、釈迦三尊や五大明王を取り上げる。
如来像の造形の変遷をたどるコーナーでは、飛鳥時代前期~鎌倉時代の顔、横からの断面、典型的な姿の三つの指標を基に比べ、くだけた表現による紹介も面白い。
寺院所蔵の仏像がどう解説されているのか。本書をひもとけば、自坊の仏像の思わぬ解説に出合え、特に若年参拝者へ説明するために生かせる表現が見つかるかもしれない。
定価1760円、小学館(電話03・5281・3555)刊。