創造論者 vs. 無神論者 宗教と科学の百年戦争…岡本亮輔著
本書は「異常な信仰と正常な信仰の違い」や「ファンと信者の違い」を問う。伝統宗教には敬意が払われ、信者は服装・食事・兵役・税金などで優遇されていると感じた者たちは反抗として「スパゲッティ・モンスター教会」(アメリカ)や、サッカー選手の故マラドーナを祀る「マラドーナ教会」(アルゼンチン)などのパロディ宗教を展開している。
テネシー州では、公立の教育機関で聖書における神の創造を否定することを禁じるバトラー法が1967年まで存在し、聖書に反するダーウィンの進化論を公教育で教えるべきかの論争も続いた。聖書の絶対性を主張する創造論者と神の存在が科学的でないと主張する無神論者の対立で、裁判まで起こっている。「まちおこし」の茶番で始まったこの裁判だが、議論は本質的なものだったという。近年両者の対立は激化し、普通の信仰も含めて全て滅ぼせば異様な信仰を始末できると考える「新無神論者」まで登場している。
著者は、宗教と科学の論争史を読み解くことで「信者を称しても信仰はない」とする宗教との関わり方が広がると予想する。伝統教団にとっては不愉快な内容と言えるかもしれないが、多くの人々が野球選手の活躍やアイドルに熱を上げる現代日本で、布教する難しさを示すものでもあるだろう。
定価1980円、講談社(電話03・5395・3512)刊。