わたしが「カルト」に? ゆがんだ支配はすぐそばに…齋藤篤・竹迫之著、川島堅二監修
キリスト教の牧師として「カルト」からの脱会支援に携わり、自らも「カルト」脱会者である著者二人がその経験を基に、ゆがんだ支配が生まれる構造とその対策を示す。
齋藤篤氏は「カルト」を「ゆがんだ支配構造によって本来人間に備わっているべき人権を奪い、さまざまな弊害をもたらす状態」と表現する。宗教に限らず、政治や家族、商業においても同じような支配構造が生まれる可能性があると指摘。「カルト」と異端の違いに言及しつつ、問題の解決には「カルト」に対する正しい理解が必要だと強調する。
著者二人がそれぞれ、入信した経緯やその中での活動、脱会に至る経緯、脱会後の葛藤をつづる。竹迫之氏は信仰していた頃の楽しかった記憶、ボランティア団体を装いハンカチの販売活動をしていた時のやりがい、脱会後も自身が所属していた団体が間違っていたとは確信を持てなかったことを赤裸々に語る。誰しもが被害者にも加害者にもなり得るとし、自分の加害者性を自覚することなく「健全な脱会は不可能といって差し支えないのではないか」と述べる。
脱会の相談に訪れる家族や悩みを抱える2世の問題への向き合い方にも触れられており、「カルト」への理解を助け、苦しむ人々に解決の糸口を提示する一冊。
定価1650円、日本キリスト教団出版局(電話03・3204・0422)刊。