岩波 仏教辞典 第三版…中村元・福永光司・田村芳朗・今野達・末木文美士編
『岩波仏教辞典』が20年ぶりに全面改訂された。新たに200以上の項目を加え、総項目数は5千に上る。最新の研究、特に近代仏教の近年の研究成果が反映され、従来にも増して仏教の理解を深めることのできる辞典になっている。
初版は1989年、仏教研究の第一人者である中村元氏、田村芳朗氏、中国哲学の福永光司氏、国文学の今野達氏を編者に刊行された。2002年に末木文美士氏が加わって600の新項目に既存項目の見直しなどを行った第2版から20年ぶりの第3版。特殊な分野の辞典としては比較的短期間での増補改訂だ。
第3版の編集協力者に大谷栄一氏、菊地大樹氏、髙橋晃一氏、菅野博史氏、小峯和明氏、山本勉氏らが名前を連ね、55人の様々な分野の研究者が執筆に参加した。特に大谷氏をはじめ、近代仏教の研究者が多数参加しているのが今回の改訂の特徴だ。
末木氏は「従来の仏教学は専ら古典文献の解読に力を注ぎ、近代の仏教にはほとんど関心を示さなかった」と指摘した上で「近代社会の中で仏教がどのような活動をし、どのような役割を果たしてきたかは、今後の仏教のあり方を考える上にも不可欠の資料を提供してくれる」と強調する。
定価9900円、岩波書店(電話03・5210・4000)刊。