仏教の歴史 いかにして世界宗教となったか…ジャン=ノエル・ロベール著 今枝由郎訳
フランスを代表する仏教研究の専門家による仏教史概説を翻訳した。世界に伝播した歴史をたどり、多様な文化に適応していった仏教の世界宗教としての特質を指し示す。
ユダヤ教、キリスト教、イスラム教など諸宗教の中での仏教の位置付けを解説。教えを説く手段を特定の言語に限定せず、経典が様々な国で翻訳されたことに注目する。インドから中央アジアと中国へ、チベットからモンゴルへ、朝鮮から日本へ、翻訳活動と共に各地の習俗、文化と溶け合い、多様な仏教文化が生み出されていく伝播の変遷をたどる。
西欧では、イエズス会宣教師による報告があり、19世紀になるとヨーロッパ人による本格的な仏教教義および実践の研究が始まった。西欧における仏教の普及に大きな役目を果たした人物として鈴木大拙と曹洞宗僧侶の弟子丸泰仙を紹介している。
著者は日本語、中国語、サンスクリット語、チベット語、ラテン語、ギリシャ語など様々な言語に通じている。日本仏教研究の分野では第1世天台座主・義真による『天台法華宗義集』の教義研究は西洋語での最初の体系的解明として高い評価を受けた。
世界に伝播した仏教の中でも特異性があるとされる日本仏教だが、同書では特異性を生む仏教の豊かさを示している。
定価1650円、講談社(電話03・5395・5817)刊。