鎌倉時代仏師列伝…山本勉・武笠朗著
鎌倉時代に活躍した運慶や快慶、院尊ら39人の仏師を取り上げ、その生涯と事績、作風の特徴を詳しく解説した一冊。
藤原道長が創建した法成寺の造像に携わり、地方の高位僧官だった講師の職に就いた康尚と、道長の晩年に同じく法成寺の造像を手掛けて僧綱位を得た定朝の二人により、平安時代後期に仏師の社会的地位は大きく向上した。続く院政期に入ると、定朝の系統に連なる正系仏師は院派、円派、奈良仏師の3系統に分かれ、鎌倉時代になると、奈良仏師から運慶派、快慶派が派生。仏師らは時々の政権や歴史の潮流と密接に関わりながら、京都や奈良、鎌倉など各地の寺院に仏像を残した。
本書では慶派と院派、円派にとどまらず、主に奈良で活動した善円とその後継者・善春をはじめとする善派、千葉の在地仏師・賢光や東国で作品を残した定快ら地方で活動した仏師まで広く紹介している。
仏像の図版を豊富に掲載しているほか、南都焼き打ち後の復興や長谷寺(奈良県桜井市)の本尊再興などにおける仏師の活躍を掘り下げたコラム、鎌倉時代の仏師の動向を概観できる年表も収録。残された記録、作品を通して仏師それぞれの生きざまを深く知ることができる。
定価2750円、吉川弘文館(電話03・3813・9151)刊。