苦を見つめて泥に生きる…山田忍良著
教王護国寺(東寺、京都市南区)の法務部長を務める著者による法話集の第2巻。第1巻『人間は何度でも立ち上がる』の英訳『LIFTING OURSELVES UP』の出版を挟んで、4年ぶりの刊行となった。
東寺の大日堂で毎週日曜に開く「法話会」の内容を編集して42話を掲載した。一つの法話は3~4ページで完結する短いもので、短い時間でも手に取って読んでもらえる工夫が凝らされている。故三浦俊良氏に教わったという「やさしい」言葉で伝え、全編を通じて筆者が見聞きした身近な話や、世間の出来事にも気を配る。第1章「利他の心で生きる」、第2章「人生は苦なり」など4章で構成する。
第3章に収録された「地獄に落ちても悔いなし」では「聞法」は新たに知識を入れることではなく「忘れているものを思い起こさせる」という点が重要だとする。仏教の実践は問題を機縁として自己を深め、問題を解決していくことの繰り返しであり、私たちは毎日、四六時中続く「行」で「徳」を身に付けていく「生活行者」だという。どこかに浄土が存在するのではなく、日々の精神生活そのものが浄土。求道心を持った生活者になることで私心を捨て、信仰的勇気が与えられると呼び掛ける。
定価1650円、スローウォーター(メール)刊。