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百五十回忌によせて新選組を振り返る(2/2ページ)

土方歳三資料館館長 土方愛氏

2017年12月8日

明治の世になると、新選組は賊徒扱いされたと聞きますが、菩提寺は義を貫いた者たちの雪冤に尽力して下さいました。74(明治7)年の明治政府による「朝敵となった人々の祭祀・慰霊を許す」という太政官布告を受け、金剛寺第29世賢雅和上や縁者たちが中心となり、76(明治9)年には近藤勇・土方歳三の両雄を顕彰する「殉節両雄之碑」が完成。篆書は旧会津藩主・松平容保公が、碑文は旧幕府軍御典医・松本良順が揮毫されました。

「義に殉じた二人の英雄の碑」という碑題からは、多摩のゆかりの者たちが持ち続けた誇りが伝わってくるようです。余談ですが、明治の時代を生きたこの地域の古老は、明治維新のことを徳川幕府の崩壊を意味する「瓦解」と呼び、「ご一新」という言葉は決して用いなかったと聞いています。

その後も、幕末九十年祭、土方歳三義豊百年祭など節目の折には法要が営まれてきました。

また1995(平成7)年には東京日野ロータリークラブにより土方歳三の銅像が建立されました。現在は、境内にこの殉節両雄之碑と歳三銅像が隣り合わせて立ち、奥殿には、土方歳三の書状をはじめとする幕末史料が展示され、大日堂には、土方歳三をはじめ、彼の曾祖父母の代からの土方家代々の位牌が供養されています。

近年は新選組隊士慰霊の大位牌、井上源三郎、近藤勇、沖田総司の位牌も供養され、毎年土方歳三の命日5月11日の頃には「新選組全隊士総供養」の法要が営まれています。新選組のふるさとと称される日野市を訪れる新選組ファンにとり、金剛寺は外すことのできないゆかりの史跡となっています。

歴史の顕彰と慰霊

「150年という時を経て、なお多くの子孫たちがその縁を保ち、集い、新選組のふるさとの地のゆかりの寺院で慰霊祭を営む」。現代の核家族社会の風潮から鑑みると、奇跡のような事実です。

今回の慰霊祭は、各隊士の遺族がそれぞれ代々祭祀を続け先祖を語り継いできたこと、そのことにより新選組に興味を抱き、新選組について語ってくださる方々が多く存在したことが結実した結果でしょう。

先人の御霊を慰霊することは、その歴史を顕彰するということと深く結びついています。新選組が風化しないためには、私たち子孫やゆかりの者が慰霊を続け、積極的に史料を公開することも大切だと考えています。

実際、土方家では、生家跡に「土方歳三資料館」を設けて、歳三ゆかりの遺品・史料を月2回公開するという活動を続けてまいりました。これまでの23年間にわたる開館を振り返ると、新たに隊士の子孫同士で縁がつながったり、多くの研究者が訪れて新たな史実が明らかになったり、またゲームや映画など創作物の新選組ファンの若い層が、本物の遺品に触れることで新たに新選組の史実に興味を抱くきっかけとなったり、うれしい出来事に接することも多々ありました。そして、こうした地道な活動が、歴史を風化させない一助となり、先人たちの足跡を顕彰し、慰霊することにつながるのではないかと考えています。

歴史をたどることのできる寺社

新選組の足跡は、寺社と深く関わっています。屯所や調練、戦の陣を構えるなどあらゆる場面で寺社が舞台となっています。また、新選組隊士や関わった人物が眠っているのも墓所のある寺社。

私たちが幕末の先人たちの足跡をたどることができるのは、寺社の存在のおかげだと言えるでしょう。参詣者を迎え入れてくれる寺社の慈悲に感謝しながら、礼儀をわきまえたお参りを心がけたいものです。

さらに今後はより多くの若い世代の方々が寺社を訪ね、歴史を知ることで、新選組の事績が次の節目となる二百回忌まで語り継がれていくことを願ってやみません。

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