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林住期の生き方(1/2ページ)

大谷大教授 山本和彦氏

2020年2月6日 11時11分
やまもと・かずひこ氏=1960年、京都市生まれ。大谷大文学部卒、インド・プーナ大サンスクリット高等研究所博士課程修了。プーナ大Ph・D、大谷大博士(文学)。大谷大専任講師、ハーバード大客員研究員などを経て、2012年から現職。専門はインド哲学、仏教学。主な著書に『インド新論理学の解脱論』(法藏館)など。
はじめに

ブッダの最後の言葉は「怠ることなく、修行を完成させよ」(南伝『大般涅槃経』)であった。修行僧は、修行に対して努力すべきである。古代インドの生活期である四住期においては、怠るべきではない対象、つまり努力すべき対象はそれぞれの住期によって異なる。学生期では学ぶことに対して努力する。家住期では家庭を守ることに努力する。林住期では瞑想に努力する。遊行期では解脱することに努力する。

古代インドでは、人間は生まれてから死ぬまで、それぞれの住期で努力し続けることが求められていた。ブッダ自身は、8歳から12歳まで学問に努力した。16歳で結婚し、家庭を持った。29歳で出家した後、修行に励み35歳で努力して成道した。それから、80歳で般涅槃するまで、修行僧や在家の人などさまざまな人に法を説き続けることに努力した。ブッダは解脱者であると同時に、優れた説法者でもあった。

人生のライフサイクル

精神分析学者で臨床医であったエリクソン(1902~94)は、人生を①乳児期(生後~17カ月)②幼児前期(18カ月~2歳)③幼児後期(3歳~4歳)④学童期(5歳~12歳)⑤青年期(13歳~19歳)⑥成人期(20歳~39歳)⑦壮年期(40歳~64歳)⑧老年期(65歳~79歳)⑨老年的超越期(80歳~90歳)――という九つのライフサイクル、発達段階に分ける(『ライフサイクル、その完結』)。

このなかで、興味深いのは最後の「老年的超越期」である。この時期では、健康維持(メンテナンス)が大切になる。他人との競争が終わる。意識を純化する。自分を見つめる時間ができる。英知が備わるようになる。自分のいままでの経験を他者に与えることができるようになる。死の恐怖を乗り越える。持ち物を軽くする。人生を振り返ることができるのはこの時期だけであり、この意味で老いるとは特権である。

『マヌ法典』における林住者

古代インドの生活規定書『マヌ法典』のなかで、林住者の生き方について述べられている。仕事と家庭を捨てる時期である林住期は、いつからなのか。「皺と白髪を見つけたとき、子どもに子どもができたとき」と言われている。いまの日本では年金が支給される65歳であろうか。

食べ物に関しては、「野菜、花、根、果実、果実油を食べる」「蜂蜜、肉、茸、西洋わさびの木は避ける」。肉食は禁止されている。「古い食べ物、古い衣服は捨てる」「〔生の〕根や果実〔を食してはならない〕」「火で料理したものを食す。熟したものを食べる」。消化の悪いものは食べてはならない。「夜か昼に食べる」ので1日1食。「新月と満月の日に大麦粥を食べる」「熟して自然に落ちた花、根、果実のみで生活する」「火と住居なしで、沈黙し、根と果実のみを食べる」などと述べられている。

住む場所としては、「家住した後には、森に住め」「他の婆羅門から、生きるに足る程度の布施を受ける」「森に住みながら、村で布施を受ける」「樹下を住居とする」などと言われている。森とは森のなかの庵のことである。現代日本では、特別養護老人ホームや街中のバリアフリーの小さなマンションや平屋に置き換えてよいと思われる。

インドらしいものとしては、「感官を制御して住む」と言われているので、瞑想としてのヨーガの実践がある。「祭祀の実行」や「朝夕の沐浴」や「ヴェーダの読誦」「ウパニシャッドの読誦」などもそうである。物欲を捨て、瞑想しながら、絶食する。これこそ死の準備である。

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