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新型コロナ問題に対する韓国仏教界の対応(2/2ページ)

東洋大学井上円了研究センター客員研究員 佐藤厚氏

2020年4月16日 15時44分

第一には、曹渓宗が作成し3月6日の談話で信者に用いることを呼びかけた『コロナ克服のための祈祷精進』という祈祷用テキスト。内容は、伝統的に病苦を克服するために読誦されてきた『薬師経』と、古代インドのヴェーサーリーに伝染病が発生した時に釈尊が読誦を勧めたという『宝経』(初期仏教経典『スッタニパータ』に収録)からなり、それぞれの経典の前後に、真言や三帰依、発願文が付いており自宅で祈祷精進ができるようになっている。コロナ退散にあわせて経典を選定し作成したところが興味深い。

第二には、インターネットを通した法会や説法。これ自体は以前から存在したが、コロナをきっかけにさらに多くの寺院で行われるようになった。そんな中、私が注目したのは法輪(ポムニュン)という僧侶の説法である。この方は韓国では知らない人がいないほど有名であるが、日本ではあまり知られていない。ただ今年の2月に日本の宗教団体・立正佼成会を母体とする庭野平和財団から「庭野平和賞」の受賞が発表され、日本でも認知度が上がりつつある。説法のポイントは、1、現在の韓国社会は実際の危機よりも心理的不安が大きくなっており、それが社会的不安の原因になっている。2、必要なことは政府に協調し、全体的な状況をよく把握してみなが注意を払うことである。3、(新天地教会などを念頭において)今、誰かを攻撃することは問題の解決にはならない。4、利己主義が問題の解決を難しくしている。釈尊の教えでいえば愚かさがその原因になっている、である。この説法は現実の問題を整理し、それを仏教の立場で解釈したものとして注目される。

第三には、諸宗連合の仏教テレビ・ラジオ局である仏教放送BTNが放送した特別番組「コロナ克服のための安心説法」。これは1回当たり約5分間、様々な宗派15人の僧侶が日替わりで説法を行い、仏教信者として非常時にどのような生活をすべきか、コロナを仏教の立場でどのように考えるべきかなどを説いている。これも宗派を超えた仏教界合同の動きとして注目される。

第四に、瞑想心理ヒーリングアプリ「コッキリ(象を意味する韓国語)」の一部コンテンツの無料提供。これは「心の授業」という会社が開発したスマホアプリで、韓国の若手僧侶で国民に癒やしを与えているヘミン師が監修している。昨年発売され、発売半年で18万件を突破したほどの人気アプリである。この中の心理治癒コンテンツとヒーリング音楽からなる「SOS緊急ヒーリング瞑想」を、コロナのニュースが連日続き、緊張状態と不安に悩まされる人のために無料で見ることができるようにした。

以上、濃厚接触を避けるため人間が集まる法会に代わり、インターネット、テレビ、スマホアプリといった媒体が活用されている。これらが今後、発展していくと、将来的に儀礼のあり方、ひいては宗教のあり方を変える可能性もあるかもしれない。

おわりに

以上、コロナ問題に対する韓国仏教界の対応を紹介した。では日本の仏教界はどうであろうか。様々な教団のホームページを見てみたが、コロナに関する注意や連絡事項は書いてあるが、医療関係者や国民に対する慰労のメッセージなどはごく一部を除いて発信されていない。何よりも仏教界を挙げてコロナ問題に対処しているという迫力が伝わってこないのが残念である。

もちろん日本と韓国では、コロナの状況や、社会における仏教のありかたが違うので一概に韓国仏教界はすばらしく日本仏教界が怠けているというつもりはない。しかし日本でも、苦闘されている医療従事者の方々のほか、外出自制によりストレスや孤独を感じている人が増えているであろうし、またコロナに感染してしまったことで絶望感に陥る人も出てくるであろう。こんな時こそ、そうした人向けの法話をしたり、瞑想、念仏、座禅、題目、真言、写経などを勧めて、精神的な慰安や自分を見つめ直す機会を与えるなど、困難に打ち勝つ力を提供していくことが必要だと思う。それがいま現在求められている仏教の社会的役割だと考える。この中で韓国の仏教界の努力に学べるものは多い。

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