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相論対論 再燃する「安楽死」議論(1/2ページ)

「尊厳死」選ぶ権利を  日本尊厳死協会・佐賀理事 古川潤哉氏

2020年8月25日 15時28分

筋萎縮性側索硬化症(ALS)で在宅介護を受けていた京都市の女性患者の依頼により薬物を投与して殺害したとして、医師2人が嘱託殺人の罪で13日に起訴された。この事件は、東海大安楽死事件の裁判例にある「死期が迫っている」などの要件を満たさず、「安楽死」とは呼べないが、インターネットなどメディア上では議論が再燃。本人の意思は尊重されるべきだとの考えがある一方、生きたい人が声を上げにくくなる、と反対する立場も根強い。安楽死の是非について、容認に近い立場と思われる僧侶と、反対するカトリック信者の大学教授にそれぞれ聞いた。

ふるかわ・じゅんや氏 1976年、佐賀県生まれ。龍谷大文学部真宗学科卒。浄土真宗本願寺派浄誓寺(佐賀県伊万里市)衆徒。日本思春期学会理事。著書に『中高生からのライフ&セックス サバイバルガイド』(共編著)。

積極的に死期を早める安楽死については容認する立場にない。リビング・ウィルの表明による尊厳死という考え方の普及に取り組んでいる。

日本では安楽死と尊厳死が混同されている状況。死をタブー視する風潮から、これらが話題にも上りにくく議論も深まらない。「終活」をただの商業的流行とせず、それぞれの死に方、即ち生き方を考える縁になるよう願う。

尊厳死とは、人生の最終段階(終末期、ターミナル)において回復の見込みがない状態での延命治療を望まないという本人の意思表示(リビング・ウィル)と、それに基づいて行われる医療のことで、平穏死、自然死を求めて本人が医療を選択するものだ。死期を意図的に早める安楽死とは異なる概念のものである。

今回話題になっているALS患者さんの事件は嘱託殺人事件であり、そもそも判例で示された安楽死の要件も満たしておらず、この件から安楽死の議論を導くことには抵抗がある。ただ、患者さんが求めたのは尊厳死ではないかという推測と、その場合、患者さんの苦悩や思いを受け止めるすべがどうすれば準備できたのかとの思いもある。

十数年前、お坊さんと話したいという在宅療養中のALS患者さんの元に後輩の僧侶と通っていたことがある。ポインタを使って「死にたい」「全部つらい」と伝えられたりする一方、「死ぬの怖い」と示されたり。本人も支える家族もつらいだろうなと勝手に推測した私にも、この患者さんが懸命に生きようとなさっていることは汲むことができた。日々葛藤があり、他者の推測は勝手なものでしかない。

ただ死にたいから死ぬという人は基本的にはいない。「死にたい」の背景にある苦痛や苦悩に目を向け、取り除くケアが必要だ。緩和ケアの世界では、身体的、精神的、社会的な痛みに加え、自己存在や生きる意味に関するスピリチュアルな痛みを全人的な痛みとし、これを緩和することを目指す。尊厳死は、十分な緩和ケアを受けられることが前提だ。しかし、麻酔の発達で身体的な苦痛はかなり緩和できるようになった今も、それ以外の痛みは人それぞれで完全に取り除くことは難しい。今回の事件の対象となった女性が、若くして意思表示も難しくなる中での全介助を耐え難い苦痛と感じることは不自然ではなく、他者が口出しできる領域ではない。その人が守りたい尊厳はそれぞれ違うし、状況で変わる。

日本は先進国で唯一尊厳死の法的担保がない。このため、訴訟や検挙のリスクで医療者も意思表示に従いにくい状況で、尊厳を保つための法整備の議論は必要だ。ただし、周りに迷惑をかけるからという理由が挙がる状況では良くない。これは出生前診断と中絶の是非などと同じく、本来、どうあっても生きていける社会の構築を目指す方が先であって、当事者がそこで悩まなければならない状況の方にこそ問題がある。

1秒でも長く生きたいという願いも、望まない延命はしないという願いも尊重される社会であってほしい。

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