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《新年座談会④》コロナ後、社会・宗教どう変わる?― 贈与としての言葉、宗教者に必要(1/2ページ)

 安藤礼二氏

 中島岳志氏

 釈徹宗氏

2022年1月12日 09時09分

 中島さんが提起されたコロナ下の葬儀・法要の問題、宗教学ではまとめて「死者儀礼」と申しますが、きちんと行えませんでしたね。それに対して何とも言えない思いを抱えておられるご遺族や関係者の方は多かった。息を引き取った瞬間に死者になるわけではない。だんだんと死者になっていく。長い間かかって固有の名称なども次第に薄れていく。本当にグラデーションがあります。家族が死んだ瞬間に遺族になるのではなく、死者と向き合う中で次第に遺族になっていく。死者儀礼に関わる宗教者としての実感でしたが、このグラデーションがすごく貧弱になったという思いがあります。

大澤真幸(1958~)さんが「未来の他者、過去の他者」という言葉を使い、日本は先進各国に比べて環境問題に対する意識が低いというのです。未来の他者へのリアリティーがなさ過ぎるという批評ですが、未来の他者と過去の他者へのリアリティーはたぶん合わせ技というか、映し鏡のようになっていて、そういう意味では過去の他者へのリアリティーがすごく貧相になってきている。過去の他者のパスをキャッチして未来へ送るというような、未来と過去の両方の他者へのリアリティーがあまり豊かではない。それで日本は先進国の割に将来の地球の問題や環境問題がなかなか良いものにならないという気はします。

かつて亡くなった方の七回忌、十三回忌、三十三回忌、五十回忌、島根あたりでは百回忌、二百回忌とやっていましたね。百回忌はその人を知る人は誰もいない。全員が見たことのない人のために集って儀式を営むというのは大変な過去の他者への思いですね。その場に身を置くと大きな流れを実感できるに違いないのですが、今や親の三回忌も危ないという状況で、過去の他者へのリアリティーの貧弱化を感じています。

二つ目のトピックスとして社会、宗教はどう変わるのか、どう変わるのが望ましいのか。中島さん、いかがでしょうか。

中島 釈さんの今のお話はすごく大切なことで、死者と未来の他者が合わせ鏡になっているという問題ですね。この話を一番明確に語っているのは柳田國男の『先祖の話』だと思います。この本に面白い話があって、バスを待っている男性が自分と同年代の男性と立ち話になった。その人は自分の商売を息子に継がせ、後はご先祖になるだけだと言ったと。柳田はそれに非常に意を強くして、この人には死んだ後に仕事がある、という言い方をしています。

やがて自分が死ぬと先祖として祀られる。だから「おじいちゃんが天国から見てるよ」と言われるように生きないといけない。ちゃんとしたご先祖になれるよう立派に死んでいく義務がある。亡くなった後、まだ見ぬ孫、曽孫に対して先祖としての仕事を果たさないといけないわけです。未来の他者との対話がずっと続いていくのが先祖の問題だと。私たちがまだ見ぬ未来の他者と対話するためにも、合わせ鏡である死者の問題が存在しているのです。

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