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宗教と文化の専門新聞 創刊1897年
中外日報社「宗教文化講座」

公益信託法の改正と宗教団体(2/2ページ)

関西学院大名誉教授 岡本仁宏氏

2024年8月27日 09時32分

第二に、同様な公益信託は、公益信託事務として従来は顕彰・奨学金・助成だけだったが、今後は多様な事業も行うことができる。つまり、具体的に受託者自身が公益的事業を行うことや、事業を運営委託し実施することもできる。

第三に、同様な公益信託は、信託財産として従来は金銭のみが信託可能だったが、有価証券、不動産や動産、さらに知的財産権などを含めて可能になった。

これらの意味は大きい。例えば、著名な作家がその著作権(印税請求権等)を信託すれば、継続的に資金が公益目的に充当されることも可能になる。さらに、不動産を信託してそこで子ども食堂をし、株式を信託しその運用益で国際交流事業をする、などという可能性も開かれた。宗教法人が公益信託として不動産や金融資産を受託し、それぞれの宗教的信条に基づいて公益的事業を、自ら、あるいは特定非営利活動法人と共同受託することも可能になった。

もちろん、信託の基本である倒産隔離(受託者が倒産しても信託財産には手を付けられないで保全される)は継承される。また、信託契約や遺言によって、委託者は法の範囲で自由にその公益的目的やガバナンス構造を決めたり、限定されているとはいえ信託財産の運用に関わることもできる。寄付者に比べて委託者の意向はより丁寧に反映されやすくなるだろう。

公益信託は、宗教法人の社会貢献による信頼性の確保のために重要なツールとなりえるだろう。

3、今後の課題
 さて、施行までに、そして施行後に何をしたらいいだろうか。

第一に、具体的に、自分たちならばどのように使う可能性があるかを構想することである。先にも述べたように、宗教法人が受託者となり社会貢献事業のためのファンドとして信託財産を運用・利用していくとすれば、信仰に根差した多くの活動に対する社会的注目も集まるだろう。信仰から発したとしても宗教活動とは区別される多様な社会貢献活動が行われることは、宗教団体への社会的信頼を高める点でも貢献するだろう。

第二に、制度や運用を役所任せにしないよう勉強し意見を出し、さらに自分たちでモデルを作っていくことである。今は、行政が政令や府令さらにはガイドラインを作っている最中である。その意味では、実質的に制度を使いやすくするか役立たないものにするかを決める具体的なルールが作られている段階である。具体的制度構築時や施行後にも適正な運用のためのアドボカシーが重要だろう。

しかし、役所に求めるだけの姿勢は改めたい。例えば役所に「“モデル約款”や“公益信託会計”を作ってくれ」、というのではなく、自分たちで多様なモデルとなる約款や会計基準を作っていく覚悟も必要だろう。つまり、具体的な制度改正のための意見を役所に言い、自分たちで使える道具を開発することである。そのためには、まず改正法や多様な海外事例を含め勉強することが必要だ。

第三に、少し長期的な課題になるだろうが、宗教が公益信託の目的に入っていないことをどう考えるか検討することも必要だろう。

改正前の公益信託法では、「学術、技芸、慈善、祭祀、宗教其ノ他公益ヲ目的トスルモノ」(第1条、第2条)という表現があった。もちろんこれは、1898(明治31)年に制定された民法第34条の規定に準拠するものであった。

しかし、改正公益信託法では、第2条第1項2号別表第13においては、公益認定法と横並びに「思想及び良心の自由、信教の自由又は表現の自由の尊重又は擁護を目的とする事務」となっており、宗教そのものは入っていない。

したがって、公益信託の信託目的として例えば「宗教の教義を広め、儀式行事を行い、及び信者を教化育成すること」(宗教法人法第2条)は想定されていない。公益法人としては宗教法人類型があるからという住み分け論は可能かもしれないが、公益信託において宗教活動が外されたのは妥当なのか、議論が必要だろう。宗教界は公益信託にほとんど関心を持っておらず、この点は改正過程で十分な議論がされたとは言えない。

いずれにせよ、公益信託法の改正は、日本の非営利セクターにとって大きな意味を持つ改革である。宗教団体は非営利セクターの中心ともいえる歴史的役割と存在感を持っている。公益信託という道具をどのように使いこなせるか、検討し準備してはいかがだろうか。

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