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「宗教2世」をめぐる用語と意味の変遷

道蔦汐里氏

  1. 単語の意味の変化をみるにあたっては、斎藤純男(2010)がまとめた、単語の意味変化(semantic change)の6類型である、意味の拡大・意味の縮小・意味の向上・意味の下落・隠喩・換喩を参照し、単語の使われ方や定義のされ方に注目して、分析を試みた。
  2. それ以前から使われていた「宗教2世」の類義語や、それらを用いた信仰継承研究などは後述する。
  3. 塚田穂高「「宗教2世」問題 信者だけの話ではない」『朝日新聞』、2021年7月14日夕刊、2。
  4. 横道誠「宗教2世問題とは何か」『中央公論』2022年2月号、2022年1月10日、108-115。
  5. 以前から、信者の親による未成年の信者子弟に対する輸血拒否問題については医学と人権の観点などから議論され、学校や家庭での宗教教育における信教・思想の自由については法学や教育学において議論がある。しかし本稿では、宗教学における「宗教2世」という言葉やその類義語そのものについての議論を目的とするため、医学や教育学、法学分野での議論については言及しない。
  6. 表現上類似した用語として、「信仰2世代」や「教団第2世代」も使用されている。森(2012)は天理教の現地化に関する研究の中で、「1999年、内戦からの教会の復興の中で、コンゴブラザビル教会はコンゴ人の信仰2世代の人たちによって運営されるようになり……(後略)。」という形で、現地で信仰を獲得した世代から数えて2世代目という意味で使用している[森2012:29]。また藤井(2015)が用いた「教団第2世代」は、「明治16年金光大神死去前後に誕生し、明治末から大正にかけて東京の大学にて宗教学や哲学を学び、教団の要職を担うようになる教師たち」を指したものとして用いられたものであった[藤井2015:112]。つまり教祖存命期に教団の中心的存在であった第1世代に対する、次の世代という意味合いでの「第2世代」であった。これらの用語は、広く一般の信者の子弟を指すものとして使用されたわけではない。
  7. 「旧統一教会対応 僧侶・宗教学者 釈徹宗さんに聞く」『朝日新聞』、2022年12月2日、28。また心理臨床学の分野では「カルト2世」という用語を使用した黒田文月(2007)の論文「家族の宗教問題で悩む青年期男性の心理療法―“カルト二世”からの解放と自立」(『心理臨床学研究』24(6), 664-674)もある。
  8. 他にも、心理学の分野において坂岡(2024)は「葛藤の当事者を表す用語として「宗教2世」を採用する立場をとらない」として「親の宗教と葛藤する子」という表現を用いている[坂岡2024:196]。
  9. この宗教記事DBを使用した研究に櫻井(2014)、山口瑞穂(2023)などがある。なお、本稿において使用するデータは2024年3月末までのもので、最終検索日は2024年9月19日である。
  10. なお、前章においては森(2012)が「信仰2世代」と表記していたが、本章では荻上編著(2022)の調査と合わせるため、「信仰2世」の用語で検索を行った。
  11. 「社会との接点が判断材料ケアセンターの必要性も カルト問題が争点に」『琉球新報』、2002年4月8日夕刊、4。
  12. 「「若者への浸透」警告 対策連絡会 統一協会の違法活動批判」『しんぶん赤旗』、2002年9月7日、14。
  13. 「「カルト集団における虐待」 体験を安心して語れる場が必要 日本脱カルト研が公開講座」『クリスチャン新聞』、2002年11月3日、2。
  14. 「新ステージ「正報師」を創設して君臨 上祐史浩「オウム真理教」乗っ取り!」『週刊現代』、2002年11月2日、64-66。「生き続ける"麻原信奉"と"世代交替" 乳児から中高生まで通う「オウム子供塾」の内実」『FRIDAY』、2002年11月22日、12-13。
  15. 「祝福二世の苦悩 千葉県茂原市の女子高生行方不明事件」『宗教問題』、2014年2月28日、42-53。「統一教会系女性団体が目論む"純潔思想"の拡散」『FORUM21』、2014年9月10日、18-21。「霊感商法の被害拡大 対策弁連集会で実態報告」『しんぶん赤旗』、2014年9月20日、15。「全国霊感商法対策弁連が全国集会 統一教会元信者ら体験談」『中外日報』、2014年10月1日、3。
  16. 「いしいさやさんインタビュー 『よく宗教勧誘に来る人の家に生まれた子の話』」『キリスト新聞』、2018年5月21日、1-2。「親が信者ゆえに葛藤し 痛み抱える子のため祈りを」『クリスチャン新聞』、2018年2月4日、4。
  17. 「映画 新宗教2世の苦悩」『仏教タイムス』、2018年2月1日、6。
  18. 「時代を読む 宗教 ある「宗教2世」の告白 親がカルト教団の信者だったら」『AERA』、2018年3月5日、34-36。
  19. 「統一教会(現・世界平和統一家庭連合)日本の苛烈献金が韓国の教祖一族を潤す」『週刊東洋経済』、2018年9月1日、52-54。「カルト被害に備えるために 統一協会の「今」」『キリスト新聞』、2018年4月1日、4-5。
  20. 「「宗教2世ホットライン」開設 "生きづらさ抱える2世の居場所に"」『キリスト新聞』、2020年5月21日、3。「「宗教二世」の葛藤と苦悩を伝える論文(上)」『仏教タイムス』、2020年7月16日、2。「「宗教二世」の葛藤と苦悩を伝える論文(下)」『仏教タイムス』、2020年8月6日、4。
  21. 「リアルな「宗教二世」物語 『星の子』を読む、観る」『仏教タイムス』、2021年1月21日、2。「宗教2世問題(上)」『仏教タイムス』、2021年8月19日、2。「宗教2世問題(下)」『仏教タイムス』、2021年9月16日、2。「本当の創価学会問題(113)」『月刊住職』、2021年10月1日、154-157。「本当の創価学会問題(114)」『月刊住職』、2021年11月1日、154-157。
  22. 「鼎談 日本人は何を宗教に求めているのか」『中央公論』、2022年1月10日、98-107。
  23. なお2021年にはNHKが相次いで「宗教2世」という用語を用いた番組を放映した。(2021年2月9日のNHK Eテレ「ハートネットTV “神様の子”と呼ばれて~宗教2世 迷いながら生きる~」、5月10日のNHK総合「逆転人生 宗教2世 親に束縛された人生からの脱出」、5月28日のNHK関西「かんさい熱視線 私たちは“宗教2世”見過ごされてきた苦悩」。)
  24. 2018年以前にも「2世信者」に関する漫画は刊行されていた。2018年に報道が増加した理由としては、エホバの証人という教団の知名度や、事前にTwitterに投稿された漫画が大きな反響を得ていたことなど理由となった可能性が考えられる。
  25. 「安倍晋三元首相 兇弾に倒れる!」『FLASH』、2022年7月12日、13-16。
  26. 「安倍元首相銃撃事件 行政も政治家も旧統一教会を"野放し"」『東京スポーツ』、2022年7月13日、14。
  27. 「親の宗教 子を束縛」『毎日新聞』、2022年7月16日、29。
  28. 「安倍元総理を殺した「何か」について」『週刊現代』、2022年7月30日、46-49。
  29. 「親に苦悩 声上げる信者2世」『朝日新聞』、2022年7月24日、28。
  30. 「統一教会、エホバの証人、創価学会etc. 信者の親を持つ家庭のリアルとは?」『SPA!』、2022年7月26日、20-23。
  31. 「旧統一教会巡る相談12倍 被害者家族の会」『東京新聞』、2022年8月5日、22。「旧統一教会脱会 都内で相談会 被害者家族の会」『産経新聞』、2022年8月28日、22。
  32. 「「宗教2世」の詩人から君へ」『東京新聞』、2022年9月6日夕刊、7。「宗教2世「信仰強制は虐待」 法規制求め署名活動」『産経新聞』、2022年9月23日、24。
  33. 「「宗教2世」らが団体」『東京新聞』、2022年12月8日、3。
  34. 「「宗教虐待」4類型例示」『日本経済新聞』、2022年12月28日、34。
  35. 以前から、いわゆる「カルト」問題の文脈では、ジャーナリストや弁護士らによる書籍なども存在していたが、本稿では「宗教2世」という用語やその類義語を使用した当事者らによる発信について分析するため、それらの論考については言及しない。
  36. Twitterにおいて「宗教2世」という用語が初登場するのは2011年頃である。また2016年2月5日にはウェブサイト「かわいいフリー素材集 いらすとや」が「独特な新興宗教(カルト宗教)を信じる夫婦から生まれた子供が、複雑な表情で家族と向き合っているイラスト」として「宗教の二世のイラスト」を公開したというツイートが残っている。
  37. 「宗教2世」に関する創作物については横道(2023b)に詳しい。
  38. 一般社団法人「宗教2世支援センター陽だまり」の設立は2023年であるが、これは任意団体「エホバの証人ピアサポート陽だまり」が発展したものだという。
  39. 「信者2世問題考える 当事者ら団体設立でシンポ」『しんぶん赤旗』、2023年6月4日、11。
  40. 「2世信者」は、猪瀬(2002)では①信仰を問わない、であり、報道においては④「カルト」など特定の教団に限定、の傾向があった。
  41. そのうえで、日本にいる「宗教2世」の人数を推計するにあたっては、「自覚的信仰者」である約1200万人のうち、「2世」はその半数以上であるとして、600万人以上という数値を示した。この推計は、あえて分類すると①現役信者のみ、②2代目以降、③状態を問わない、④宗教教団全般(※団体ではなく「自覚的信仰者」)、になるだろう。
  42. 「入信2世」は、清水他(2021)による「入信2世世代」という形での使用例があるが、同論文の他の箇所は「2世信者」を用いており、現役信者の中の世代を示す表現となっている。

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    長らくご愛顧を賜りありがとうございました。(2025.10.1)
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