神道と日本人 古事記と冠婚葬祭…鎌田東二・一条真也著
二人の対談は「神道とは何か」「神道と冠婚葬祭」「現代社会と神道」「神話と儀礼」「注目すべき人々との出会い」の5部で構成されている。片や「神道ソングライター」を自認する宗教哲学者であり民俗学者、片や冠婚葬祭企業の社長であり「礼の求道者」として幅広く活躍する実践者。興味深いのは二人が33年来の友人で、互いに「魂の義兄弟」の契りを結んだ関係であると認めていることだ。
鎌田氏は、キリスト教と仏教が「救いの宗教」と「悟りの宗教」に類型化されるのに対し、神道の原型は「畏怖の宗教」だと言う。また『日本書紀』に「信仏法、軽神道」という比較が出てくるのを引き、「仏法」は「法」という教えの体系で信不信をはっきり表すことができる一方、「法」体系を持たない神道は、信不信ではなく「尊」か「軽(不敬)」の二つの態度しかないと論じている。
息の合ったやりとりは日本人のこころに分け入り、先祖伝来の伝承の集積として畏怖されてきた神道の神髄を語り合う。鎌田氏は、この出版計画が持ち上がった矢先にステージ4の大腸がんであることが発覚し、対談を早めたことを告白している。全編に熱意があふれ、二人が「至高の時間」を過ごした空気が伝わってくる。
定価1320円、現代書林(電話03・3205・8384)刊。