杦田善孝上人選集 第一巻…杦田善孝上人選集刊行委員会編
念仏三昧の聖者と呼ばれ、光明主義の主唱者として明治・大正期に活躍した山崎弁栄の教えは、浄土門に限らず多くの宗教者や知識人に思想的な影響を与えた。本書に名を冠する杦田善孝も、弁栄の教えと出逢い、生涯を光明主義に捧げた実践者である。
弁栄が1914年に頒布した「光明会趣意書」は光明主義運動の創始を告げる指針である。その教えを相承した笹本戒浄から光明主義の正統を師承した杦田は、48年に設立された光明会本部聖堂の主管として、弁栄聖者の教えと先師笹本上人の行跡を通して光明主義の布教伝道に尽くした。
選集第1巻の本書には、機関誌『光明』に掲載された「光明会」「光明会本部聖堂」に関わるものや、巻頭言、編集後記を収載している。引き続き4巻までに「弁栄聖者の御教え」「光明主義の念仏三昧論」「光明主義をめぐる人々」「光明主義玄談」そのほかの論稿を集め、第5巻以降は法話・講話で構成するという。
弁栄聖者は「最も重い罪はおのが霊性を殺すことである」と言い、戒浄上人は「霊性の開発が人類今後の進化の方向だ」と力説した。杦田は言う「人類現在の危機からの脱却も、人世真実の安寧も所詮このコースを措いて他にない」――と。
定価5500円、方丈堂出版(電話075・572・7508)刊。