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「節談説教」復活の意味と背景 ― 音声力、大衆性、平易さ評価(2/2ページ)

ジャーナリスト 田原由紀雄氏

2014年3月5日

この繁盛にブレーキをかけたのは当の真宗教団だった。60年代、古い体質からの脱皮を目指して西本願寺は「門信徒会運動」を、東本願寺は「同朋会運動」を開始した。本山は節談を「前近代的」なものとみなして説教者たちに自粛を求め、テレビなど新しいメディアの普及もあって「近代的」な法話や講話への移行が一気に進んだ。

昔の説教者のテープやCDは節談を知る重要な資料である。俳優小沢昭一が制作した「また又『日本の放浪芸 節談説教』」(6枚組みCD)を聴いてみたら、60年代の事情を知る北陸の老説教者の次のような貴重な証言が収められていた。

「人気のあった節だからね。なぜ、やめたかちゅうんですね。本山というものが時代ということを考えてね。抑揚によっていい節が出てきたんならいいけれどもね、ただ人をひきよせるためにしょうことなしにやるような節だったらね、軽蔑を招くちゅうことだな。節が悪いんじゃあないんです。それがもう力が入って熱が入ってもうやめられん、獅子吼しとってね、やめられんというような、そこから出てきたものならいいんですけどね。軽蔑を招きますからね、知性の目からみればね、何言っとるんだいと。そういうことの言われないようにやはり認識していかにゃならん。そういうようなものの考え方というものを本山の方で言ってきますからね。そういう関係で節というものが除々になくなっていったんだね」

節談への愛着が滲む苦渋の談話。節を無くした途端、参詣者はめっきり減ったという。

私が節談のテープを初めて聴いた77年は同朋会運動を推進する大谷派内局と伝統墨守を主張する大谷家・保守派が熾烈な紛争を繰り広げていた時期だ。説教者たちの多くは大谷家・保守派の側についた。内局の“節談嫌い”には立派な理由があったわけだ。

真宗高田派の寺の出である作家丹羽文雄は1953(昭和28)年に発表した小説「青麦」で節談の様子を次のように描き出す。

「高座の説教師は、善男善女を手だまにとっているようであった。浪曲に近い肉声の魅力が聴衆をうっとりさせた。……上手な説教師は自由自在に善男善女の感情、心理をあやつることができた。……さんざん翻弄され、いい気もちにされた参詣者は、ひとりのこらず仏に助けられたような気もちになってしまうのである」

そして、「しみじみとした対話調子の方が参詣者にもとどきやすいのではないか」と付け加えている。

新宗教の布教攻勢への強い危機感を背景に始まった同朋会運動や門信徒会運動は、門徒に主体性を求め、「平座」での対話を重視する。門徒が質問の術もなく「高座」の説教者に手だまにとられているようでは運動の成功はおぼつかない。本山が節談の自粛を求めた裏にはそんな判断があったに違いない。

芸能的要素も含んだ大衆性、分かり易さが節談の最大の魅力だ。その再評価には日本の伝統を新しい視点から見直す世代の登場、漫画やアニメが文化の表舞台に躍り出るなど社会状況の変化も関係していると見てよい。

節談の盛衰には布教(教化・伝道)における感情と知性、本山と地方、近代と前近代、社会状況など複雑な要素がからみ合っている。近年、様々な領域で宗門近代史の再検証が進んでいるが、布教のスタイルや手法を軸とした近代史の再検証も今後の課題ではないだろうか。

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