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児童養護施設の現場で思う ― 子育てに大人は当事者意識を(2/2ページ)

児童養護施設光明童園園長、浄土真宗本願寺派西念寺衆徒 堀浄信氏

2015年4月29日

2014年1月、「明日、ママがいない」という児童養護施設を舞台としたドラマが社会問題となった。ドラマの中で子どもたちへの酷い虐待の場面があり、実際に施設で生活する全国の子どもたちが学校等で心ないいじめを受け、関係団体が記者会見を行い放送局に中止や改善を求めるという事態に陥った。

ドラマ問題を受け、NHK熊本放送局から取材依頼があり、当時卒園前の高校3年生、大木場のどかさんとその保護者が快諾をしてくれ、同年3月に九州地区で放送され、大きな反響を呼んだ。

放送の中で彼女は、「ドラマを見て違うとらえ方をしている人もいると思う。今まで自分もいろいろと偏見の目で見られていた。でも、これからまだここで暮らす子たちのためにも自分が伝えられることはちゃんと伝えたい。施設のことをちゃんと知ってもらいたい」と取材を受けた決意を述べ、「社会に出る上で一番心配なのは『人間関係』。施設で生活したことは何も恥ずかしいことでもないし、言おうと思っているけど、そこで避けて離れていく人がいたら私、もたないかもしれない……」と複雑な思いを語ってくれた。彼女の勇気に感謝するとともに、施設を、子どもたちを理解してもらうための自らの取り組みの至らなさを痛感させられた。

日本では、「子育ては親が行うもの」という認識が根強く、「家庭で育つことが『普通』、施設で育つことは『特別』」ととらえ、「かわいそう」等といった同情や蔑みの思いを持つ傾向がある。のどかさんが語っているのは、「『施設育ち』というレッテルを貼るのではなく、そのままの私を見てほしい」ということだ。

また、「よその子どもは自分には関係がない」という考えから「子どもは親のもの、他人は口出しできない」との認識も根強い。しかし本来、子どもは社会の宝で、子育ては公的責任で行われるべきものである。全ての子どもを大切にし、教育環境を整えることで、良き環境が、良き人を育み、良き働き人をつくり、良き納税者を生み、より良い社会を形成する。

ギリシャの諺に「子どもの笑い声の聞こえない町は滅びる」とあるように、子どもを大切にしない社会は滅びる。どれだけの大人が当事者意識を持てているのだろうか。実は私自身、数年前ある講演会の中で「今の社会を形成している一人の大人として、虐待などでつらい、きつい思いをさせてしまった子どもたちに謝れますか?」と聞かれ、打ちのめされた。私こそが当事者意識が欠落していた。

法蔵菩薩は、四十八願をたてられる際、「若不生者、不取正覚」(一切衆生がさとりに入らない限り、自らもさとりに入らない)と誓われ、親鸞聖人は、「世の中安穏なれ、仏法ひろまれ」と述べられた。その意味を改めて考えさせられる。

冒頭のA子ちゃんの言葉を味わいたい。

浄土真宗のみ教えに出合わせていただいた子どもたちも私も、仏様から願われている「仏の子ども」である。私が子どもを「良い」「悪い」と判断する世界ではない。

実際、子どもたちのつぶやきやその存在に救われることが数多くある。子どもたちのお世話をし、生かしていたつもりが、実は私が子どもたちから「和顔愛語」を日々いただきながら生かされていた。

そして、み教えの大いなる願いの中で子どもたちと共に生かされていることに気づかされ、つらいことや悲しいこと、いろいろなことがある中で、良いことも悪いこともすべてをご縁として、お互い同じ仏の子どもとして、共に育ち、共に生きていく、御同朋・御同行としてのあり様、生き方が問われる。自らの至らなさを自覚し、それを自覚するほどに大きく感じられる周りからの助けや救いに感謝し、そこから前向きに人生を生きていこうとするその姿勢が求められ、その姿勢がそのまま、子どもたちに伝わると思う。

いま、私に何ができるのか。それを日々自問し、み仏のみ教えに照らし合わせながら、これからも子どもたちと共に生かされながら生きていきたいと思っている。

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