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「越境する日本の女性仏教徒」ワークショップが問いかけたもの(1/2ページ)

兵庫大准教授 本多彩氏

2018年1月3日
ほんだ・あや氏=兵庫大准教授。専門は宗教社会学、アメリカの日系人と仏教。「アメリカ仏教会における食文化の変遷」『宗教研究』(第90巻第2輯、386)、「アメリカ仏教管見」『光華会宗教研究論集:親鸞と人間』第四巻(永田文昌堂)など。

昨年7月17日に国際ワークショップ「越境する日本の女性仏教徒」が龍谷大学で開催された。今回登壇したのは、イギリス出身で日本人の本願寺派僧侶と結婚し現在は僧籍をもち寺院内外で活動するヴィクトリア吉村氏と、日系アメリカ人でアメリカ本土の本願寺派仏教会(寺院)の開教使、パトリシア宇宿氏である。それぞれが日米で僧侶としてジェンダー不平等を体験したり研究してきた。ワークショップを企画し、当日趣旨説明を務めた者として簡単に紹介する。

宇宿氏はTranscending Dichotomy: a Perspective from Americaというテーマで、まず、約15年前アメリカでは仏教会やその活動の中で、男女の性別役割分担を負担に感じる人がいたという調査結果を紹介した。今日、この状況に変化が見られるという。ジェンダーの不平等感が軽減されてきているというのだが、その理由として、メンバーである日系人の世代交代、仏教会でのジェンダー平等性を当然だとする考えの広がりがあるとしている。吉村氏は、Female, Foreign and in the Firing Line: The Adventures of a British female Buddhist Priest in Rural Japanというテーマで、日本の地方寺院で白人の女性僧侶として活動する中で体験してきたことを話した。若い頃は女性が教師資格を取って法務をすることに否定的な態度に直面し、子どもが誕生したときは「黒い髪で良かった」といった言葉を耳にしたという。このような体験、変化は、国や地域や時代によって異なるが、宗教現場でジェンダーの不平等や居心地の悪さを感じてきた人がいる。

現在、多くの宗教教団では、年齢別・男女別の組織がつくられ、入会者の属性を限定するなどの形で組織化がはかられている。また僧侶になるまでの過程や、僧侶になった後の立場に関して、男女で差異がみられる教団もあり、特定の宗教的場に一方の性に属する人の立ち入りを禁じているところもある。さらに僧侶やその家族である立場上、直面する寺院での男性・女性としてのあり方、また寺院で求められる役割や立場が性別によって異なる場合もある。

こうした教団や組織のあり方は、宗教の現場に携わる人の多くが経験してきているが、たとえその中で疑問に感じたり、不当ではないかと思うことがあっても、あまり大きな問題にならないことが多い。なぜジェンダー不平等な状況になっているのか、歴史や慣習、社会的・文化的規範といったことをその理由として受容したり、また、自身が宗教的な場に身を置く(あるいは宗教者である)がゆえに声を上げることを躊躇してきたことが事実なのかもしれない。しかし、このような現状の中から声を上げ始めている人たちがいる。

こうした流れに対応を準備している教団や集団も登場している。多様な性的立場の人たちの声を取り上げようと教団内に該当の部署を立ち上げた教団や、海外の活動を広げつつ対応している教団もある。

先ほど述べたワークショップはその一例に過ぎない。龍谷大学アジア仏教文化研究センターBARC(http://barc.ryukoku.ac.jp/)では、開設当初からワークショップ、セミナー等を開き、現場からの声と研究者からの報告を交えながらジェンダーに関して討論を重ねてきた。2013年には「ジェンダーを語らない日本仏教に未来はあるか」というテーマで、現代日本仏教におけるジェンダー不平等の現状について川橋範子氏の発表があった。2016年にはワークショップ「仏教の女性観を考える―ジェンダーの視点から―」が開催され、仏教学者で日蓮宗尼僧の岡田真水氏から仏教経典に表された女性の成仏に関して、そして曹洞宗尼僧の飯島惠道氏からは自らが経験している現場のジェンダー不平等に関して、それぞれ発表があり、フロアからも多くの質問があった。別のセミナーでは、近代の仏教婦人会に関する研究発表も行われている。

これらをみると、ジェンダーと仏教というテーマは、宗教学・仏教学のみならず、社会学、歴史学、組織論、ライフヒストリー(自分史)など、様々な視点から取り上げることが可能になってきているということができる。仏教系の大学で、性差やジェンダーに関して前向きに議論しようという土壌ができつつあるとの思いを深くした。

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