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持続可能な開発目標(SDGs)に関する宗教の役割(2/2ページ)

国連広報センター所長 根本かおる氏

2018年3月30日

SDGsの実践には、「ザ・正解」というものはありません。しかし、SDGsに向かい合うと、課題同士、担い手同士のつながりへの意識が深まり、ものごとを有機的につなげながら統合的に思考する力や、思いとリソースを持った人同士を業界の垣根を越えて結び付けてより良い方向を目指すプロデュース力が鍛えられます。私自身、SDGsの広報啓発を担うようになって、お付き合いするアクターや関係する課題が飛躍的に広がりました。SDGsが分野を越えた共通言語となり、結びつきが生まれやすくなるからでしょう。

さらに、先進国・中進国・途上国すべてが普遍的に取り組むSDGsはいわば世界共通の物差しで、30年に向けた羅針盤・座標軸です。日本国内の貧困格差や高齢化、教育、ライフスタイルなどの国内課題にも関わります。すべての国の実践がSDGsという共通の物差しにそって評価され、優良事例や教訓を世界に向かって発信し、共有し合える仕組みになっています。

また、SDGsには民間部門や地方自治体が世界レベルの議論に政府の対応を待たずに直接つながることのできる「入り口」「窓」の役割もあり、やる気のある団体を巻き込んでいく推進力が見て取れます。「地域の拠点」的な存在であるお寺や教会が中心となって、SDGsの学びの機会や日頃の実践を進めていただくこともできるでしょう。

私自身、最近、東本願寺・西本願寺にてSDGsについてお話しさせていただき、17年11月にはニューヨークの国連本部から幹部が招かれ、東京の築地本願寺での「仏教×SDGs」をテーマにした次世代リーダーズサミットでSDGsについて基調講演する機会に恵まれました。

紛争や迫害で故郷を追われた難民・避難民の権利の保護に長く携わったことのある私にとって、「誰一人置き去りにしない」という人権に根差したSDGsの考え方は、難民をはじめとする取り残されがちな人々を包摂するものとして強調したいポイントです。昨今広がりつつある「異なるもの」への差別や不寛容に対して反対の声を上げ、移住のプラスの側面について語り、メディアや政策立案者に移住という課題にバランスの取れた対応を求めなければなりません。宗教界の方々には是非寛容の精神を地域の方々にしっかり根付かせることに貢献していただければと願っています。

今年は1948年に世界人権宣言が採択されてから70年という節目の年です。エレノア・ルーズベルトが起草のとりまとめを推進して生まれた世界人権宣言は、2度の世界大戦で傷ついた人々の思いや、平和と自由への強い願望が込められています。30の条文には、男女平等や人種差別の禁止などが謳われていますが、法的な拘束力を持つものではありませんでした。

後に国際人権法が拡大発展して法的拘束力が備わり、今では女性、子ども、障害者、移住労働者などの脆弱な立場にある人々の権利を網羅するまでになりました。世界人権宣言は時代を先取りしていたと言えるでしょう。世界人権宣言をとりまとめた人々の先見性と、その精神を受け継ぐ条約の交渉にあたった人々の忍耐力と行動力とを思わないではいられません。15年9月に生まれたSDGsの掲げる「誰一人置き去りにしない」は、まさに一人ひとりの尊厳を大切にする人権が根本にあります。およそ「開発」に関わる目標でここまで明確に言い切っているという点において、非常に新しいアプローチです。

世界人権宣言70周年に際して、現代に生きる私たちは全国連加盟国の総意で成立したSDGsといういわゆる「世界レベルの社会契約」に、これからどのように魂を吹き込んでいけるのだろうかと考えると、身の引き締まる思いがします。未来の子どもたちが歴史を振り返った時に、SDGsをポジティブな遺産として感じてもらえるよう、将来世代の芽を摘むことなく多様な人々が自分らしく暮らしていける社会を、是非ご一緒に実現していこうではありませんか!

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