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大古墳群と土師氏の関わり―墳墓造りを担った古代氏族(1/2ページ)

大阪府立近つ飛鳥博物館館長 舘野和己氏

2019年8月30日
たての・かずみ氏=1950年、東京都生まれ。京都大大学院博士後期課程単位取得退学。日本古代史専攻。奈良文化財研究所・奈良女子大などを経て、現在同大特任教授・名誉教授、大阪府立近つ飛鳥博物館館長。著書に『日本古代の交通と社会』『古代都市平城京の世界』、編著に『日本古代のみやこを探る』『日本古代の交通・交流・情報1~3』など。

大阪府立近つ飛鳥博物館(大阪府河南町)では、夏季特別展「百舌鳥・古市古墳群と土師氏」を9月29日まで開催中である。それぞれ堺市の大仙古墳(仁徳天皇陵古墳)と羽曳野市の誉田御廟山古墳(応神天皇陵古墳)を代表格とする百舌鳥古墳群と古市古墳群が今年7月に世界文化遺産に登録されたことは、多くの方がご存じであろう。両古墳群では4世紀後半から6世紀前半にかけて多数の古墳が造られ、その中には大王墓とみられる大型前方後円墳が含まれている。しかし土師氏というと、あまりなじみがないのではなかろうか。古代氏族の一つである土師氏は大勢力ではなかったが、天皇や高官たちの墳墓造りや喪葬儀礼への関与という重要な職掌を担っており、両古墳群の造営にも関わったと考えられている。その土師氏について少し紹介してみよう。

殉葬の風習廃止で活躍

『日本書紀』によると、土師氏の祖神は天穂日命だが、直接の祖となったのは野見宿禰だった。垂仁天皇32年に皇后の日葉酢媛命が亡くなると、天皇はその葬礼をどうするか群臣に諮問した。当時の風習で殉葬が行われると、悲惨な光景が展開したので、天皇はそれを何とかしたいと考えたのである。

その時、野見宿禰が、出雲国の土部100人を呼び寄せ、彼らを使って土で人や馬など様々な物の形を作り天皇に献上した。天皇は喜んで、それらを日葉酢媛命の墓に立て、それらを埴輪とか立物と名づけた。ここに殉葬の風はなくなり、天皇は野見宿禰を土部職に任じた。これが、土部連らが天皇の喪葬をつかさどるようになった由縁であり、野見宿禰は土部連らの始祖である、と伝えるのである。もちろん歴史的事実ではない。なお土部連は後には土師連と書かれるようになる。

ちなみに野見宿禰は同じく垂仁天皇の7年に、当麻邑の当麻蹶速と力比べをして勝ち、当麻蹶速の地を天皇から賜り、朝廷に仕えるようになったとも伝えられる。相撲の起源伝承である。当麻は二上山に近い。そしてそこは石棺に用いられた凝灰岩の産地であったから、これは石材の確保争いが背後にある伝承ともみられている。そもそも野見宿禰の野見は、石を削る工具であるノミにも通じる。そうであるなら、野見宿禰を祖とする土師氏は、土部を率いて埴輪を作るだけでなく、石棺さらには墳墓そのものの造営にも携わることを職掌としていたと考えられるのである。

殯の管掌の方向に

しかし6世紀後半以降になると畿内では前方後円墳は造られなくなる。当然埴輪も不要となり、土師氏は大きな転機を迎えた。そうした中、推古天皇11(603)年に、征新羅将軍として進軍した来目皇子が筑紫で亡くなると、天皇は周防国で殯を行い、土師連猪手にそれを掌らせたという。埋葬以前の遺体を建物内に安置して、儀礼を行ったのである。猪手は皇極天皇2(643)年には、天皇の母の喪を管掌している。

さらに白雉5(654)年10月に、孝徳天皇が難波長柄豊碕宮で亡くなると、百舌鳥土師連土徳が殯宮のことを掌った。このように土師氏の職掌は墳墓造りから、喪葬儀礼、特に殯の管掌という方向に移っていったのである。

『日本書紀』は養老4(720)年にできあがった。そこに記された野見宿禰の伝承などは土師氏の提出した資料によったものであり、喪葬関係の職掌に土師氏が誇りを持っていたことを示している。

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