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第22回「涙骨賞」を募集
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第22回「涙骨賞」を募集

新型コロナウイルスとの共存の時代(2/2ページ)

天理大おやさと研究所教授 金子昭氏

2020年9月15日 09時14分

私も伝統宗教・新宗教による情報の多くを読んでみたが、公式ホームページ上の発信でもあるせいか、命の有難さとか思いやり・繋がりの大切さなど、焦点が絞りきれていない一般的な表現のものが少なくなかった。藤山氏が分かりづらさと言われたのも、このことを指すのかもしれない。

一つ興味深いのは、教えの上からのコロナ禍の受け止め方である。どんな天災や疫病でも人災の側面を持っている。コロナ禍も同様である。一昔前では地域的な感染症で終わっていたものが、人々の広範な移動により世界的なパンデミックになってしまった。また、過度の都市化や自然環境破壊の問題も指摘できるだろう。

そこから、コロナ禍は天(神仏)からの戒めであるとする“天譴論”が出てくる。天譴論は実を言うと、神仏の怒りや罰の現れだとするものから、人類に対する警告や試練、また自省、導きの教育とするものまで、グラデーションをなしている。どの宗教の教えの中にも天譴論的要素があり、その濃淡の段階をどうわきまえ、どう人々の心に届くように説いていくか、指導的立場にある者の力量が問われてこよう。それにはまだもう少し時間がかかるかもしれない。

疫災は有史以来たびたび日本を襲った。とすれば、日本古来の叡智がコロナ禍の受け止め方にとって参考になることがあるはずだ。今年創建930年になる土生神社(大阪府岸和田市)の阪井健二宮司は、感染症を疫病神として畏れ、隙を見せず通り過ぎるのを待つことと共に、氏神が地域の人々を守ってくれることを説き、「疫病退散祈願」のチラシを氏子家庭の一軒一軒にポスティングしてきた。昨今、自粛生活が喧伝されているが、阪井宮司の取り組みは、まさに古来の叡智に学び、地域の神社としてできる地域密着型の活動の一例だと言えよう。

新たな布教が可能に (3)世の人々のための救済実践

宗教の社会活動についての議論では、よくホームとアウェーということが言われる。従来であれば、宗教者にとってホームとはすなわち宗教施設(寺院・教会)であり、アウェーとはそこから出て社会で活動することだ。しかし、先述したように、オンラインでの活動が定着すれば、宗教施設(ホーム)での活動はよりいっそう檀家・信徒の家(ホーム)に連結していく。災害支援や福祉活動の現場はどこまでもアウェーにあるが、心のケアのようなことはオンライン上でも可能なるがゆえに、これも今後はホームでの活動に組み込まれることが予想される。対面が原則だった医療の分野においても、近年ではオンライン診療が普及しつつあり、コロナ禍ではまさに急務のように言われている。宗教界でも、インターネットはツールとして大きな活用可能性を持っている。

インターネットの強みは個と個を繋げられるところにある。核家族の時代にあっては、子供が独立し配偶者がなくなれば独居状態になり、やがて本人の死と共にその家は消滅する。従来の寺院や教会は家単位で人々を繋ぎとめてきた。今後はこれに加えて個の単位での繋がりを図っていくことが期待できる。既存の檀信徒への対応だけでなく、新たな布教伝道もオンラインで開拓可能である。オンラインはこうしてアウェーを限りなくホームに近づけてくれる。無縁社会は終わっていないのだ。

なお、社会的な活動に関して付言すれば、予防啓発活動も必須である。現在、官民あげてコロナ時代における「新しい生活様式」を喧伝している。宗教界も少欲知足や慎みの大切さを説いているが、一歩進んでもっと具体的な生活様式の提案を打ち出せないだろうか。例えば、台湾に本部を持つNGO仏教慈済基金会では、代表の證厳法師が、新型コロナウイルスが動物由来のものであることを強調し、家畜を屠殺して食べるべきではないと、この機会を捉えて一般の人々にも菜食の勧めを打ち出した。これなどを参考にして、日本の諸宗教もまた、宗教ならではの積極的な提言を行うことが期待される。

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