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2024宗教文化講座

荒行堂という修行現場を通して―地下鉄サリン事件から25年⑦(1/2ページ)

正中山遠壽院荒行堂傳師 戸田日晨氏

2020年10月27日 09時09分
とだ・にっしん氏=1953年、東京生まれ。國學院大文学部哲学科卒。現在、正中山遠壽院荒行堂傳師、遠壽院総合修法研究所所長。
(1)行堂改革と重なり合うオウム問題

オウム真理教事件について私が述べられることには限りがありますが、「荒行堂」という日蓮宗の僧の修行道場において、行僧時代から現在の「傳師」職に至るまでの45年間の経験を踏まえて、「修行」という共通テーマを基に話してみたいと思います。

まず、遠壽院荒行堂における「寒百日荒行」の内容について簡単に説明すると、荒行堂に入行した加行僧(以下「行僧」)の日課は概ね次のような次第になります。

①「午前3時に始まり午後11時に至る迄の1日7度の水行」、②「水行時以外は読経堂における法華経読誦三昧」、③原則「粥と味噌汁を主体とした1日2度の食事」

この行は発祥以来400年以上の歴史が有り、毎年11月1日の入行で始まり、寒中百日間修されています。そしてこの行法の特徴として、代々遠壽院に伝わってきた「祈祷法の相伝」が行われるということがあります。この「祈祷相伝」の加行次第を有することにより、「遠壽院流」(註1)という修法流儀が成立することになります。

現今、この荒行道場で加行する行僧は例年十数人前後が平均ですが、現在私は「行堂改革」の方針で、荒行堂を巡る内外に亘る改革改善方策を打ち出し、意識を同じくする方々と共に改革実践に取り組んでいます。

紙数の関係上、改革内容の詳細をここで述べることは控えますが、大雑把に説明すれば――行僧の中には、人格形成上、非常に歪んだ精神構造を持つ人が近年、目立つようになった。このような行僧の存在が「修行道場」という場所においては他の同行僧はもちろん、道場全体にも肝心の当人が全く意識しないという状況下、大変な悪影響を及ぼす。その改善策を模索しながら進めている――ということです。

「行をする」というのは、世間的な思考概念から自身を解放することともいえます。また逆説的になりますが、「行をする」に至るまでの過程においては、「健全な思考生活」というものの深みある蓄積も、或る意味で基盤とならなければならないと思います。

しかしながら、このような「人」としての精神構造の基底部分が欠落したまま年齢のみを重ねてしまった謂ゆる「問題僧」に共通していえることは、「自己肥大化」した思考のみが優先され、決して「他者を許容する」ことが出来ない状態に落ち入っており、修行者としては相当自己矛盾する状況となっているのではないか、と考えざるをえないという特徴があります。

また私は、世間的思考脳、知識脳的なものを一旦頭から外して、「行」をするという行為の立脚点を考えます。表現の仕方としてはどうかと思いますが、自身の中に確固とした或る種の「美意識」を保つ必要がある、と常日頃感じています。しかし、心のバランス感覚が閉ざされている行僧を観ていると、全くといっていいほど「美的感性」とか、徴細な感受性が育まれていないことを見出すことが出来ます。

オウム真理教に目を転ずれば、事件当時数々のメディア報道等で紹介された「修行」と称する様態は、例えば「ヘッドギア」、「水中クンパカ」などに象徴されるように、まるで「修行サーカス団」の様相を呈しており、尚且つマインドコントロールによって「この教団だけが正しいのだ」と信じ込まされているわけですから、この中からは美意識に基づいた「修行センス」などというものは、全く創造され得ないことだと思うのです。

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