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第22回「涙骨賞」を募集
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神道の社会的側面と他界的側面(1/2ページ)

筑波大名誉教授 津城匡徹(寛文)氏

2024年12月3日 10時44分
つしろ・まさあきら氏=1956年8月、鹿児島県生まれ。東京大農学部林学科卒業。東京大大学院人文科学研究科博士課程単位取得退学。筑波大教授などを経て、現在、同大名誉教授。博士(宗教学、國學院大)。近著に、津城匡徹名で『宗教と合法性――社会的なものから他界的なものまで』(2024)、『無きものとされた近代知――死者とのコミュニケーション』(2022)、津城寛文名で『社会的宗教と他界的宗教のあいだ――見え隠れする死者』(同、以上アマゾン専売)。ほかに著書は多数。
1、国家レベルの公共宗教

近代日本の政教関係について、私はしばらく前から、「社会的神道」と「他界的神道」という枠組みで考えている。帝国憲法下の神道の一部を、「国家神道」と呼ぶかどうかは、言葉の定義によるが、大きく分けて、そのような実体はなかったという見方と、皇室祭祀を中心に、神社、学校、軍隊、祝祭日、メディアなどの実践がつながって一定のまとまりがあった、という見方が並び立っている。

私は後者に近い立場で、この時期の日本は「国家レベルの公共宗教(=国教)」をもってやがて「統制国家」に至ったもの、と捉えている。この捉え方は、さまざまな批判や擁護がともに踏まえるべき、中立的な出発点となる。

その際、つねに念頭に置くべきは、「国教」も「統制国家」も、昭和前期の日本だけのものではないという、ごく当然のことである。人類史のいつでもどこでも起こりうる、実際あちこちで起こってきて、今も起こっていることの一例として、この時期を捉えることで、特殊な事例と普遍的問題、神道固有の問題と宗教共通の問題、日本固有の問題と主権国家共通の問題を、対照して論じることができる。私たちに切実なこの時代は、日本史が人類史に対して説明責任を果たすべき、しかしその課題はまだ十分に果たされていない、未解決の問題を孕んでおり、したがって、産みの苦しみが今も続いている。

2、「社会的」神道と「他界的」神道

私が近代神道を考える際の枠組みは、宗教の特徴的な二面を対比させるための「社会的宗教」と「他界的宗教」の対語を、神道にそのまま応用したものである。この二面は、現代の宗教研究では、「公共性」と「スピリチュアリティ」の課題に、それぞれ関連する。

宗教学の全体を見まわしてみると、最近の包括的なテーマとして「宗教の公共(益)性」と「宗教と(の)スピリチュアリティ」が、ひときわ目立つグループになりつつある。2011年の東日本大震災までは、この二つのグループは担い手や対象が分離し棲み分けていたが、大震災以降、大量の死者の大きな圧力を受けて、単なる社会志向の「公共性」ではなく、また単なる他界志向の「スピリチュアリティ」ではなく、スピリチュアルな公共性、公共的なスピリチュアリティといった、両面のテーマの融合が見られる。

私はそれ以前から、この二領域は切り離すのではなく、あえて絡めながら扱うべきだと考えていて、自分のかつての宗教研究同様、ほとんどの宗教研究も、どちらかに偏っていることがますます痛感されてきた。現在は、この偏り、対比そのものも、主題化している。

3、戦争と神意

宗教と政治というテーマは、突きつめると、社会的宗教の極端な実践である「宗教戦争」と、他界的宗教の極限である「神意」の関係に極まる。

武力による攻撃を武力によって排除しようとする行動は是認されるか? このくりかえし起こってくる難問には、二つの正当な思想がある。一つは非暴力の思想、もう一つは武力による反撃の思想である。武力行使の問題は、必ずしも宗教思想と関連しないが、論者によっては、神意や信仰に裏づけられた主張になる。たとえば前者を代表するガンジーに対し、後者の典型はブーバーである。

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