平和と平等の歎異抄…菱木政晴著
本2026年11月4日 09時53分
『歎異抄』は親鸞聖人の言葉を通して、その思想を伝える書として広く読み継がれてきた。著者は、明治期の大逆事件で死刑判決を受けた真宗大谷派僧侶・髙木顕明の思想に影響を受け、伝統教学の研究に進んだ。その中で『歎異抄』が親鸞聖人の思想の根源である「往還二回向」を示す書物だと気付き、その理解を伝えようと3年間にわたって開いた市民講座を本書にまとめた。
著者は、親鸞思想への誤解を解きほぐし、その意義を問い直す。例えば「他力」を自力と対置される親鸞思想の中心概念とする理解に疑問を呈し「絶対他力」や「自然法爾」を強調する解釈が定説化していることに危機感を示す。第2条の「面々の御はからい」にも着目し、人間の主体的な営みまで自力として退ければ「浄土真宗が自覚覚他の仏教ではなくなるし、平和と平等の希望も消えてしまう」と訴える。
その思想を読み解く手掛かりとするのが、非戦と平等を唱えた髙木の「余が社会主義」だ。親鸞聖人の教えを平和と平等の問題に引き寄せ『歎異抄』を現代に生きる私たち自身の課題として読み直す視点を示す。
定価4180円、白澤社、電話03(5155)2615。


