義浄訳『金光明最勝王経』の研究【上巻】 隠れた菩薩道に基づく「成仏思想体系」の解明…楊軍著
唐代の僧・義浄について、仏教辞典は「戒律の研究を志して広州から海路インドへ赴き、25年にわたり各地を巡って多数の梵本を中国に将来した僧」と記している。律蔵の翻訳者として知られる義浄によって訳出された経典の中で、これまで「護国経典」あるいは王権と仏教の統合という文脈の中で理解されてきた『金光明最勝王経』を新たな視点から解析し、義浄その人を「インド仏教の到達点を見極め、それを東アジア文明の文脈に移植した思想的媒介者」として再評価しようと試みたのが本書だ。
はしがきに「大乗思想の歴史は、いまだ終わらない」とある。それは鎮護国家の代表的経典とされる『金光明最勝王経』を精査することで、そこに精緻な成仏思想体系が構築されていることが明らかとなり、大乗思想の展開にかつてない視界が開かれるという著者の確信を意味する言葉でもある。
著者は本書を通して、内的変革が社会秩序の倫理的基盤となり、社会的秩序は修行の持続を可能にする外的な条件を形成するという循環的構図を浮かび上がらせる。それは時代を超えて現代世界の課題に直結するテーマでもある。
定価1万6500円、東方出版、電話06(6779)9571。


