PR
購読試読
中外日報社ロゴ 中外日報社ロゴ
宗教と文化の専門新聞 創刊1897年
中外日報社「宗教文化講座」

自殺問題での宗教者の役割 ―「ゲートキーパー」に最適(2/2ページ)

U2plus代表 東藤泰宏氏

2014年5月30日

しかし、日本のゲートキーパーにはどこに行けば会えるのだろうか。政府は「国民が皆ゲートキーパーであるべき」と目標を掲げる。しかし、実際に深刻な悩みを持つ人が、どのようにしてゲートキーパーと接触できるかは、明確に示されているとは言えない。

内閣府のゲートキーパー養成用の動画は全て合わせて「11分」である。このあまりに短い時間のトレーニングで、誰かの生死に関わることができるのだろうか、という疑問もある。

また全国でゲートキーパーが何人いるのかも不明確だ。「ゲートキーパーのバッジ」などがあるのだが、バッジをしている人を求めて街をさまようわけにもいくまい。

この問題に対して、私は「宗教者がゲートキーパーとなるべきだ」という主張をしたい。根拠はその資格の妥当性、アクセスの明確さ、人口ボリュームの三つだ。

圧倒的多数の葬送儀礼を主宰する宗教者であれば、その一人一人が日常の中で、各自の信仰に基づく死生観を持っているであろう。それは数分の解説動画では補いきれるものではなく、職業倫理として自然と、かつ厳しく磨かれていくものであると思われる。

また、寺院は全国各地に散らばっており、その気になればほとんどの人が相談に訪れることができる。地域によっては、宗教者が自分から各家庭に足を向けることも可能だろう。

とりわけ仏教では寺院が全国に約7万7千カ寺あり、それに倍する僧侶がいる。うつ病患者数約100万人、自殺予備軍約30万人(自殺者の約10倍とされる)に対して、しっかりと向き合うのに、十分な人数だ。以上の点から、ゲートキーパーとしてこれほど適した集団はないのではなかろうか。

もちろん宗教者が即座にゲートキーパーになれはしないだろう。ある程度のスキルや知識が求められるはずだ。精神疾患への知識、当事者との距離の取り方といったコミュニケーションの技法などの習得が必要になる。

前述したように、ほとんどの自殺者は精神疾患の診断があてはまる。このため、うつ病、アルコール依存症、統合失調症、パーソナリティー障害など最低限度の精神疾患について、基礎的な知識が求められるだろう。

また、相談者の深刻な悩みに対峙しつつも、その重さに引きずり込まれないような工夫が必要になってくる。例えば医師は医局での息抜きにより、患者と向き合うことができるという。臨床心理士はカウンセリングの時間を必ず区切ることで、距離をとる。死に関する相談を受けるNPOでは、対象者に必ずグループで向き合うという。その他に当事者に寄り添う「傾聴」というヒアリング技法なども含めて、医学や心理学から学ぶことは多いかもしれない。

さらに、病気以外の社会的な問題を扱う各機関へのチャネル(経路)が求められる。一部の意欲的な心療内科では、精神科医の他に、カウンセラー、キャリアカウンセラー、ソーシャルワーカーがいる。

ただクリニックへの経済的な負担が厳しく、一般的にはなっていない。自殺問題では、精神疾患だけでなく、自殺の危機要因となる、失業・生活苦・家庭問題・将来への不安などへの対応が求められるが、病院だけではなく宗教者にとっても、単独で処理できる問題ではない。

よって個別のケースに応じて、それぞれ専門的なNPOや弁護士、行政書士など、適切な相談機関へとつなぐ「ハブ」となれることが重要だ。

以上、勝手な提言をしたが、どのように感じられただろうか。Twitterやfacebookでぜひ感想を伝えてほしい。@toudou_U2plus

『安芸国神名帳』奉唱の再興 神仏合同の世界平和祈願祭を契機として 瀨戸一樹氏4月3日

はじめに 令和7(2025)年、終戦80年の節目の年を迎えた。今なお世界では戦禍で苦しむ人々が後を絶たない。同年12月、被爆地・広島で活動する広島県青年神職会・広島密教青…

《宗教とAI③》AI時代に深める対機説法 井上順孝氏2月27日

AIへのアウトソーシング 2024年度に某大学で講義していたとき、学生が提出するレポートにAIを使っている割合が急に増えたのを感じた。宗教について初めて教わった学生が書く…

《宗教とAI➁》ブッダボットで変わる仏教 亀山隆彦氏2月12日

一、 筆者は日本仏教専門の仏教研究者だ。特に古代~中世の日本密教の実態解明を目標に研究を続けている。近年、その作業を通じて、ある理解に到った。それは日本仏教僧が高度な思想…

殺傷武器輸出解禁 その危うさに意見発信を(4月29日付)

社説5月1日

宗教関与の「暗と明」 ハンセン病なお続く差別(4月24日付)

社説4月28日

文化財盗難の多発 防犯対策、意識啓発を(4月22日付)

社説4月24日
「墨跡付き仏像カレンダー」の製造販売は2025年版をもって終了いたしました。
長らくご愛顧を賜りありがとうございました。(2025.10.1)
中外日報社Twitter 中外日報社Facebook
このエントリーをはてなブックマークに追加