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いまこそ「あの世の話」をしよう ― 僧侶に質問、様々な見解(2/2ページ)

愛知大国際問題研究所客員研究員 内藤理恵子氏

2014年11月19日

この真言宗豊山派の場合、それぞれの僧侶に見解の相違は見られるものの、「六道輪廻」や「大日如来」「阿字」など密教的なキーワードを出す僧侶が多かった。「引導により輪廻から解放される」というシステムも分かりやすく、なぜ葬儀が必要なのか、という疑問もすんなり理解できた。

しかしながら、これらの他界観や葬送の意味などに関して、一般の若い世代は驚くほど知らない。何も知らないからこそ、サブカルチャーにおける「他界観」は格好の創作対象となっており、宗教者が知らないうちに、次世代は「あの世の観念」をアニメや漫画から取り込んでいるのが現状だ。2014年4月に文系の私立大学1~3年生(71人)を対象に「あの世のイメージ」を記述してもらったものの中から「特定のアニメ作品の影響を受けていると思われるもの」を以下に抜粋した。

学生1「アニメ『Angel Beats!』や『あの日見た花の名前を僕達はまだ知らない。』から考えて……あの世とは〈思い〉や〈願い〉があるから各国の宗教で〈救済〉や〈成仏〉〈転生〉がある」

学生2「アニメ『ドラゴンボール』のイメージです」

学生3「サンリオアニメ『ぽこぽんのゆかいな西遊記』の桃源郷」

学生4「『封神演義』(漫画・アニメ)のような仙人によって治められ、魂が仙人界にとどまられる世界」

学生5「アニメ『トムとジェリー』のイメージ(光の階段が空から降りてくる感じ)」

学生6「無の世界・『聖☆おにいさん』のような雲の上・『鬼灯の冷徹』の地獄・天国・転生(つまり一人の中に三つのイメージが併存しているということ)」

学生7「漫画『マギ』のあの世」

学生8「アニメ『リトル・チャロ』のお花畑」

アニメ世代は創作物から受けるイメージをやすやすと取り込む。この状態を看過するのではなく、仏教界から、たとえば源信の『往生要集』や「曼荼羅」などを積極的に紹介する試みなどがあってもいいのではないか。なぜなら「あの世」のことを考えることは、同時に「いまを生きる宗教倫理」につながるからだ。「あの世については考えない」という考え方も、もちろん一理あるだろう。しかし、私は、「あの世」についてもっと柔軟に考えて良いと思うのだ。

そう思うようになったきっかけのひとつに、今年9月、群馬県を旅した際に不思議な「庭」に遭遇したという経緯がある。その「徳明園」は裕福な呉服商人・山田徳蔵(1964年没)が遺した回廊式の庭である。池を囲むようにして観音像と「あの世への通路を模した洞窟風の小道」と「笑い閻魔」「笑い鬼」が並ぶ。池の中を見ると「浦島太郎」の石像があり、池から少し離れた高地には亀を模した巨大な岩、その岩から見上げた先の崖には杖の先に髑髏を付けた仙人の立像までもが配されていた。平安後期に生まれた浄土庭園をベースにしていると思うが、それにしても設計者の個性があふれている。庭を一巡すると、以下のような物語が見えてきた。

遍く観音の慈悲があり、閻魔が笑って迎えてくれる。次元を往来する浦島太郎は亀に乗って現世に帰るが、最終的には仙人となって神仙界に上る。仏教と民話と道教が混在し、面白い。庵の補修工事をしていた庭の継承者に尋ねると「特定の宗教には関係していない。ただ、ベースとなっているのは『観音経』です」とのこと。あの世のことは、もっと自由に楽しく考えて良い、というメッセージがこの庭には託されている、と感銘を受けた。

また、近年では米国ハーバード大の脳神経外科医が臨死体験に関する本を出版したこともあり、そのような方面からのアプローチを突破口に「あの世」について議論を進めることも可能か。量子力学や宇宙物理学の研究が進んだ現在となっては唯物論に、むしろ思考の靄がかかる。

思えば、キリスト教における「天国」のイメージも、宴会のようなもの、神との謁見、エデンの園、ヨハネの黙示録……と時代によって流行があり、ルネサンス期はそれらのイメージが百花繚乱であった。

科学と宗教の融合の可能性が見えてきたいまは、「ルネサンス以上に面白い時代」かもしれない。そして、その議論を主導するのは宗教者であって欲しいと思う。

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