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被爆70周年の意味 ― 若い人に最新の知識を(2/2ページ)

ヒロシマ・ピース・オフィス代表、前広島市長 秋葉忠利氏

2014年12月12日

ピンカー教授は、何十世紀という人類史を振り返って、人類が非暴力的になってきていることを多くの数字や統計を引用して「証明」している。例えば、米国内の殺人件数等は、建国以来きれいに右肩下がりだし、イギリスでも13世紀以降、全く同じ傾向が観察されている。

日本国内を考えても、500年前には、「国」と「国」、例えば信濃と甲斐が戦争をすることは当たり前だったが、現在の日本で、当時の「国」に相当する都や県、府が戦争を始めることなど考えられない。

《被爆80周年はあるのか》

ピンカー教授の著書名『The Better Angels of Our Nature』はリンカーン大統領の第1次就任演説の最後の言葉なのだが、直訳では上手く意味が伝わらない。短い言葉で一番、端的に内容を表しているのは仏教用語の「慈悲」または「慈悲心」なのではないだろうか。つまり、ピンカー教授は人類史をたどって、人間社会に慈悲の心が広まり、世界がより平和になってきたことを立証したと言ってもよい。

こうした世界を創る上での被爆者の役割は、亡くなった被爆者の思いも担って、「還相回向」の具現だとさえ言えるのではないだろうか。仏教的な解釈もできるピンカー教授の大著は、今後も私たちが謙虚に先人たちの教訓を生かし続ければ、核や戦争のない平和な世界を実現できることも確信させてくれる。

だが、心配な点もある。『ヒロシマ』の著者ジョン・ハーシー氏が85年、2度目の広島訪問の際に残した言葉である。「これまで核兵器が使われなかったのは、被爆者が自分達の体験を世界に向かって語り続けたからだ」である。核兵器が核兵器の使用を抑止するという核抑止論は誤りで、真実は、被爆者が核抑止力を持っているということだ。国際政治がこの真実を忠実に反映していれば、核兵器はすでに廃絶されていたはずだ。しかし、残念なことに、軍産複合体に象徴される体制と為政者たちは、被爆者のメッセージを無視してきた。

そして時は残酷である。被爆者の高齢化とともに、核抑止力を持つ被爆者の数は減り発信力も減る。それは、核兵器の使われる可能性が増すことを意味する。日本にもいる、真実の見えない為政者たちを抑止する存在がなくなれば、必ず核戦争は起こる。それが80周年の前であっても不思議ではない。

だとすると、私たちの仕事は明確である。核戦争を阻止し、無事に80周年を迎えられるようにしなくてはならない。「無事」にとどまらず、核兵器のない世界も実現しよう。

来春にはNPT再検討会議が、また夏には被爆70周年をテーマにしたさまざまなイベントが開かれる。来年こそ私たちの力を合わせて、世界世論の大きなうねりを創り出せる年である。そのためには、情理を尽くした発信を通して、人間活動のあらゆる側面から多くの人にアピールし、積極的な行動の輪を広げたい。

例えば、科学的な視点から最新の「核飢饉」と「核の冬」の知識を、特に若い世代の人たちに広めること、法律や政治的な視点からも、マーシャル諸島共和国の応援、人道的影響についての国際会議の支援、核廃絶や平和のための署名集め、さらに若いリーダーたちの育成と選挙への出馬支援など、できることは多い。

そうした努力の一環として、私たちは広島で、被爆60周年以来の伝統になった市民主催の慰霊と平和のコンサートを、来年は「24時間平和コンサート」として開催する準備を進めている。参加者は全員ボランティアで、プロ・アマを問わず、一人(一組)5分から10分の間、1分間の平和メッセージに続いて、音楽をはじめさまざまな分野のパフォーマンスをしてもらう。24時間、祈り続ける参加者も歓迎する。情と理を統一する祈りを通じて、平和への新たな展望と創造的エネルギーが広がることを期待している。

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