PR
購読試読
中外日報社ロゴ 中外日報社ロゴ
宗教と文化の専門新聞 創刊1897年
新規購読紹介キャンペーン

宗教者としての本質が問われる臨床宗教師活動(1/2ページ)

武蔵野大教授 小西達也氏

2017年12月22日
こにし・たつや氏=1967年、静岡県生まれ。早稲田大大学院理工学研究科修士課程修了。米国ハーバード大神学大学院修士課程修了。カリフォルニア州アルタ・ベイツ・サミット医療センター、東札幌病院、岡部医院でのチャプレン職等を経て、2013年から現職。専門はスピリチュアルケア論、スピリチュアリティ論。日本臨床宗教師会理事、日本スピリチュアルケア学会理事、日本臨床死生学会評議員。主な著書に『仏教とスピリチュアルケア』(共著)、『グリーフケア入門』(共著)など。

布教はなぜ不可か

臨床宗教師養成講座が全国の宗教系大学で広まる中、2016年度から始まった武蔵野大の同講座の2期生も順調に学びを深めている。既に知られているように臨床宗教師とは、「被災地や医療機関、福祉施設などの公共空間で心のケアを提供する宗教者」(「日本臨床宗教師会設立趣意書」)である。

そうした講座の初学者の典型的な問いの一つに、「臨床宗教師活動において自らの宗教・宗派の教えが出せないとしたら、宗教者がそのような活動を行う意味はどこにあるのか」というものがある。臨床宗教師活動は公共空間で公共の福祉を目的として行われるものであるため、ケア対象者の要望がない限り、特定宗教・宗派の教えを説くことはできない。「日本臨床宗教師会倫理綱領」でもその遵守の重要性が繰り返し説かれている。

もちろんそうした疑問も無理はない。なぜならば宗教者にとって「教え」こそが、そのアイデンティティーの根幹であり、その布教・伝道こそがその最重要の仕事の一つと考えられるからである。

しかし筆者は、臨床宗教師の原型である「チャプレン」としての、日/米、病院/在宅での実践経験から、「臨床宗教師活動」の場というのは、むしろその宗教者に、宗教者としての本質的な在り方の探究と実践を迫る場であると考える。

「生の立場」の正確な理解

公共空間で「教え」が持ち出せない最大の理由は、現代社会が個人の自律性尊重を重視する、いわゆる自由主義社会であるためである。しかも「教え」の主要テーマである、人の「生き方」は、個人の自律性の最根源に関わる事柄である。そうしたものについて、他者が特定の「あるべき」を指示することは、はばかられる。しかし「あるべき」なしで、一体どのように相手の生き方をサポートするのか。

実はその実践が、臨床宗教師が主として提供する「スピリチュアルケア」である。その基本は、ケア対象者を理解し、その自己表現をサポートしていくことにある。具体的には、ケア提供者は、ケア対象者が置かれている人生の境遇や状況、いわば「生の立場」の、可能な限り正確な理解を試みていく中で、同時にその立場に自らをも正確に位置づけていく。それがいわゆる「寄り添う」ということである。

そしてその対象者の「生の立場」での情景やそこでの実感を言語化し、それを対象者に返すことで対象者の表現をサポートしていく。そしてもし、その提供者による表現がケア対象者にとって適切なものであった場合には、それがケア対象者自身のものとなり、しかもそれにより対象者は「わかってもらえた」と感じ、そのさらなる自己表現意欲が促され、そこからその状況下での「生き方」発見へとつながっていく。

このようにスピリチュアルケアは、アドバイスや教導と異なり、対象者の「心の深い次元」への目覚めを援助し、その内面生活を支えていく中で、ケア対象者自身が納得いく生き方を見いだしていくことをサポートするものである。その際、その「心の深い次元」を、個我的自己を超えた宗教的世界観特有の次元とみることも可能であろう。

異なる宗教のケア

異他を包括する視点の目覚め

公共空間におけるケアのもう一つの大きな課題は、提供者と対象者の宗教が異なる場合のケアはどうするのか、ということである。それは極端な例でいうならば、「仏教僧はイスラム教徒に対していかなるケアが可能か」ということである。そうしたケアは「インターフェイス(Interfaith、異宗教〈信仰〉間)ケア」と呼ばれる。これは異他性を有するものに対するケア、「異他ケア」として一般化することもできる。

実は臨床宗教師のケアの対象者は、その「宗教」のみならず多くの面で異他性を有する。「経験」の異他性ということで言うならば、ケア提供者は多くの場合、対象者と同様の経験がない中でケア対象者の「生の立場」に寄り添っていく必要に迫られる。例えば臨床宗教師の多くは被災者としての経験を有さず、終末期患者としての経験は皆無である。

開山1300年の勝縁に寄せて 横田隆志氏1月29日

長谷寺の開山 真言宗豊山派総本山長谷寺(奈良県桜井市)は、2026年に開山1300年を迎える。長谷寺の御本尊である十一面観世音菩薩は、現世・来世の願いをかなえる霊験仏とし…

大阪万博と大阪・関西万博 君島彩子氏1月13日

2025年万博の閉幕 2025年、大阪・夢洲で万博が開催された。「いのち輝く未来社会のデザイン」をテーマに掲げ、技術革新のみならず生命・環境への配慮を前面に据えた点に特徴…

「中日仏学会議」レポート 菅野博史氏12月24日

日本と中国の学者10人が研究発表 「第9回中日仏学会議」が11月1、2日に、北京の中国人民大学で開催された。人民大学には、中国の教育部に認められた100の研究基地の一つで…

分岐点の非核平和主義 共存の理念を忘れるな(1月28日付)

社説1月30日

縮小の中の成熟化 高齢宗教者の出番(1月23日付)

社説1月28日

AI進化の先に 心と深く関わる領域を担う(1月21日付)

社説1月23日
「墨跡付き仏像カレンダー」の製造販売は2025年版をもって終了いたしました。
長らくご愛顧を賜りありがとうございました。(2025.10.1)
中外日報社Twitter 中外日報社Facebook
このエントリーをはてなブックマークに追加