PR
購読試読
中外日報社ロゴ 中外日報社ロゴ
宗教と文化の専門新聞 創刊1897年
新規購読紹介キャンペーン
PR
2024宗教文化講座

ブッダの語るシンプルライフ(2/2ページ)

大谷大教授 山本和彦氏

2018年8月29日

ブッダは食物に対して知足を多く語っており、過食を戒めている。つまり腹八分目の推奨である。その理由は三つある。第一に食物は欲望の対象であり、第二に大食は健康を害するからであり、第三に大食は瞑想の敵であるからである。

心は智慧によって満足するのであり、欲望によっては満足しない。知足は衣服やお金に対しても言われている。「たとえ貨幣の雨が降るとしても、欲望が満足することはない」とブッダは言う。

人間関係

人間関係はシンプルライフの要である。『スッタニパータ』第一章「蛇の章」のなかの第三節「犀の角」では、ブッダは犀の角のように独りで歩めと言う。妻子は執着の原因であるので、妻子も父母も捨てよとブッダは言う。在家の生活にはいかに欲望や執着の対象が多いことか。ブッダは在家者に対して、それらをすべて捨てて出家者になるように勧めている。

また『ウダーナ・ヴァルガ』第25章「友」では、悪い友と付き合わず、善い友と付き合えと言われている。この章では、どのような人と友として付き合うべきでないのか、もしくは付き合うべきなのかがテーマとなっているので、在家者に対して語られているようである。ここでの悪人とは信心のない人、ケチな人、二枚舌の人、他人の不幸を喜ぶ人である。善人とは信心のある人、気持ちのよい人、素行のよい人、知識のある人である。さらに、善人はすべての苦しみから逃れられる法(ダルマ)を知っている。

ブッダは在家者に対しては悪人と付き合わず、善人と付き合うように言う。そして、人間関係をすべて断ち切り、出家して修行するように勧める。

四住期

古代インドでは四住期という人生を四つに区分する生き方が理想とされていた。学生期、家住期、林住期、遊行期の四つである。学生期では、学校に行き勉強する。家住期では、仕事と家庭を持ち家族の生活を守る。最初の二つの住期では物質的繁栄が目的である。生きていくための手段を身につけ、飢えないように生活する。

林住期では、仕事と家族を捨てて、人間性、精神性向上のために努力する。家族を捨てるというのは、子から自立するという意味である。家族と暮らしていた大きな家は処分する。仕事は定年し、年金で少欲知足、つまり欲を少なくして、足るを知る生活をする。もう一度、大学へ入学するのもいいかもしれない。小さな別荘で林住するのも、特別養護老人ホームで林住するのもいいかもしれない。役所、病院、スーパーマーケットなどへ徒歩で行ける平坦な市街地の小さなマンションで林住するのが現実的である。小さな庵(マンション)で暮らすので、荷物は処分する。ついでに物欲も捨てる。

遊行期は、解脱を目的とする宗教エリートの道であり、出家修行者の住期である。定住せずに放浪し、瞑想し、煩悩を滅し、苦を滅し、死を待つ。われわれ現代人には無理な住期である。実際には『地球の歩き方』を持って地球を遊行するのもいいかもしれない。古代インドでは寝込んで死ぬという発想がない。いまの日本の高齢者の現状と比べてみると驚くべきことであると同時に、うらやましいことである。

最後の二つの住期では精神的繁栄が目的である。欲望という煩悩を捨てる努力をし、苦を滅する。

まとめ

シンプルライフは簡素な生活(パーリ語サラフカ・ヴゥッティ)のことである。知足、小食、シンプルライフすべてをブッダは次のように言う。「知足、小食、雑用少なく、簡素な生活、感官を欲望に向けず、賢明で、傲慢でなく、他人の家の食物に執着しない」(『スッタニパータ』)、このような人が目的達成者(涅槃者)である。これは出家修行者に対してブッダが語った言葉であるが、在家者にとっても理想とすべき生活である。

「浄土宗の中に聖道門と浄土門がある」 田代俊孝氏3月18日

浄土宗開宗850年をむかえて、「浄土宗」の意味を改めて考えてみたい。近時、本紙にも「宗」について興味深い論考が載せられている。 中世において、宗とは今日のような宗派や教団…

文化財の保護と活用 大原嘉豊氏3月8日

筆者は京都国立博物館で仏画を担当する研究員である。京博は、奇しくも日本の文化財保護行政の画期となった古社寺保存法制定の1897(明治30)年に開館している。廃仏毀釈で疲弊…

語り継がれるもうひとつの神武天皇陵 外池昇氏2月29日

神武天皇陵3カ所 江戸時代において神武天皇陵とされた地が3カ所あったことは、すでによく知られている。つまり、元禄の修陵で幕府によって神武天皇陵とされ文久の修陵でその管理を…

人生の学び 大事なのは体験で得た知恵(4月12日付)

社説4月17日

震災犠牲者名の慰霊碑 一人一人の命見つめる(4月10日付)

社説4月12日

ケア活動の意義 宗教者の貢献を見直す(4月5日付)

社説4月10日
このエントリーをはてなブックマークに追加