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第22回「涙骨賞」を募集
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黙殺される天皇陛下のメッセージ(1/2ページ)

成城大教授 外池昇氏

2018年10月31日
といけ・のぼる氏=1957年、東京都生まれ。88年、成城大大学院文学研究科日本常民文化専攻博士(後期)課程単位取得修了。2009年から同大文芸学部教授。著書に『幕末・明治期の陵墓』(吉川弘文館)、『天皇陵の近代史』(同)、『天皇陵論』(新人物往来社)、『天皇陵の誕生』(祥伝社新書)など、論文多数。

改元についての議論が低調である。来年の4月まで平成が続いて5月からが新しい元号になるわけだが、もういくらも時間は残されていない。ことここに至って、この際元号はやめようだの、西暦にそろえようだの、元号と西暦の併記にしようだのといった動向は身の回りにおいても見聞きするようにはなったが、それらはいってみれば、この改元をどのように無事に乗り切るかといった表面的な話ばかりに終始していて、そもそも元号とは何か、といった根本の問題は見過ごされてしまっているように思われる。

以下、来年の4月から5月にかけてなされる改元をめぐる諸点のうち、いくつかを取り上げることにしたい。

改元をめぐる話題の中でしばしば取りざたされるのがコンピューターの問題である。どういうことかというと、一般にコンピューターには1年の間に二つの元号の表示枠は設定されるようにはなっていないというのである。それでは昭和から平成への改元の際にはどうしていたのかとも思うが、これは全くおかしな話なのであって、元号がある限り改元は必ずついてくるものなのである。元号の表示枠をコンピューターに設定しようというのなら、最低二つの表示枠は初めから設けておかなければ使い物になる訳もないことは、元号についての基本的な知識さえあれば必ず理解できることである。

それよりも深刻なのはカレンダーの問題であろう。当然印刷の時期に新元号の発表が間に合う訳もない。このまま推移すれば、来年のカレンダーには元号はおそらくほとんど印刷されることはないと思われる。その理由は少しでも考えれば分かる。来年のカレンダーの印刷、またデザインの決定に与えられた条件は、西暦としては(1年を通じて)2019年、元号としては4月までは平成31年、5月以降はカレンダー印刷時点では不明、年を越えてか越えないでか分からないが、いずれかの時点で新元号の発表という、これ以上はないほど見事にこんがらがったものなのである。

もし少なくとも何らかの形で西暦のみではなく元号もカレンダーに盛り込もうというのならば、4月までの元号は平成であって、5月からの元号はまだ分からない(もちろん実際に5月には新しい元号が定まっている)という難問に対して美しい答えを出さなければならない。この条件にどのくらいのカレンダーデザイナーが正面から立ち向かい、そして立派なカレンダーを仕上げてくれるというのであろうか。年末に店頭に並ぶ来年のカレンダーが西暦一辺倒になるのは、まさに火を見るより明らかと思われるが、さてどうであろうか。

これらの問題の指摘は、『読売新聞』平成30年8月7日付(朝刊)から同月11日付(朝刊)にかけて計5回連載された「迫る改元―現状と課題―」に要領よくまとめられている。ただし「現状と課題」というだけあって、そもそも元号あるいは西暦による年のあらわし方とは何かというような根本的な問題には触れるところはない。

しかし考えてもみれば、今回の改元は平成28年8月8日の天皇陛下のビデオメッセージに端を発するものなのである。そしてそのビデオメッセージは、近代皇室制度における天皇のあり方の根本にまで言及する極めて重い問いを社会一般に投げかけたものではなかったか。この度の改元の源泉がそこにあるのならば、いま社会一般でなされている改元についての動向は、あまりに表面的に過ぎるのではないか。改元・元号から深く近代皇室制度の根本にまで考えが及ぶべきであると思うのであるが、それは誤った考え方なのであろうか。

もちろん、元号なり改元なりというのは単に理念や理想を語るだけで済むような事柄ではない。我が国の社会一般の日々の生活に密着したものである。それらが元号なり改元なりによって妨げられることがあってはならない。

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