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都道府県別人口推計からみた天台宗寺院への影響 ― 過疎地寺院問題≪9≫(2/2ページ)

大正大教授 新保祐光氏

大正大教授 村上興匡氏

2019年12月4日
3 都道府県別にみた「消滅可能性が高い都市」にある天台宗寺院

⑴「消滅可能性が高い都市」にある天台宗寺院の実数
 「消滅可能性が高い都市」にある天台宗寺院を都道府県別にみると、千葉県が69カ寺と圧倒的に多い。続いて岩手県の42カ寺と続き、群馬県32カ寺、山形県27カ寺、鳥取県23カ寺、岡山県21カ寺、長野県16カ寺と続いている。「消滅可能性が高い都市」にある寺院の日本全体の平均が6・4カ寺、かつ5カ寺以下の都道府県が37であることを踏まえれば、以上の県は顕著に多いといえる。

⑵都道府県別にみた「消滅可能性が高い都市」にある天台宗寺院の割合
 岩手県が75%、鳥取県が62・2%である。次に割合の高い徳島県及び奈良県が33・3%であることを考えると、岩手、鳥取は顕著に高い割合である。

4 都道府県別にみた「消滅可能性都市」にある天台宗寺院

⑴都道府県別にみた「消滅可能性都市」にある天台宗寺院の実数
 実数が多いのは、千葉県が157カ寺、茨城県が103カ寺で、ともに100カ寺を超えている。次に兵庫県が67カ寺、群馬県が67カ寺、大分県が48カ寺となっており、これらも平均の3倍以上となっている。

⑵都道府県別にみた「消滅可能性都市」にある天台宗寺院の割合
 秋田県は100%となっている。また、山梨県(83・3%)、長崎県(81・8%)、青森県(77・8%)、愛媛県(70・8%)、和歌山県(69・7%)、大分県(69・6%)、宮城県(67・6%)もかなり高い割合となっている。くわえて新潟県、北海道、富山県、茨城県も約半数が「消滅可能性都市」に天台宗寺院がある。「消滅可能性都市」にある天台宗寺院の割合は、平均の26・1%を超える都道府県が22道府県であり、ほぼ半数となっている。

5 人口減少の影響を顕著に受ける天台宗寺院が多いと思われる都道府県

⑴人口減少の影響を顕著に受ける天台宗寺院が多いと思われる都道府県
 地方自治体の機能低下の影響を顕著に受けると思われる都道府県を検討するうえで、「消滅可能性が高い都市」、「消滅可能性都市」にある天台宗寺院の実数、または割合が全国平均の2倍を超える都道府県を取り上げて概観する(表)。平均の2倍とは、「消滅可能性が高い都市」に関しては、実数が12・8件以上、割合が20・6%以上の都道府県。「消滅可能性都市」に関しては、実数が32・4件、割合が52・2%以上の都道府県である。

表から、天台宗寺院が人口減少の影響を受ける都道府県について検討すると、以下の六つの類型に分けられよう。
①「消滅可能性が高い都市」という地方自治体の存続そのものが危うい地域に、天台宗寺院の実数が多く、その割合も高くなっている都道府県で岩手県、山形県、鳥取県。
②「消滅可能性が高い都市」にある寺院の実数、「消滅可能性都市」にある寺院の実数の両方で上位に入っている千葉県、群馬県。
③千葉県、群馬県とは反対に、「消滅可能性が高い都市」「消滅可能性都市」どちらにおいても割合が高いにもかかわらず、実数では上位でない青森県。
④「消滅可能性都市」にある寺院の実数が多く割合も高い大分県。
⑤いずれか一項目のみ該当した都道府県。
⑥これらの項目の上位に一つも入らない都道府県。

少なくとも①~④の顕著に影響があると、割合、実数の両方で名前が挙がった県に関しては、人口減少の影響を強く受けることが予測される。

おわりに

本調査は日本全体で起きている人口減少という大きな変化に対応するにあたり、優先順位、対象選定、方法などの方針を導くきっかけとなる可能性がある。ただし、人口推計からみた一つの指針にしか過ぎないという限界もある。例えば岩手県は、観光地として著名な中尊寺のある平泉町に寺院が集中しており、人口減少の影響は少ないかもしれない。

そのため、天台宗総合研究センター2班では、今回影響が強いとされた地域について現地調査等の詳細な調査をし、より人口減少と宗派寺院との関連について深く検討していく予定である。

(本論は天台宗総合研究センター2班報告書「人口減少が天台宗寺院に与える影響」を基に執筆した)

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