不作為と沈黙の罪 平和の要求強く発信を(7月23日付)
国連パレスチナ難民救済事業機関(UNRWA)に所属し、ガザ地区をはじめ中東各地のUNRWAオフィスでは10人以上の日本人がスタッフとして働いているという。昨年11月に読売国際協力賞を受賞した清田明宏医師もその一人で現在、UNRWAの保健局長を務めている。
イスラエルはそもそもUNRWAの活動に批判的だったが、2023年10月のハマスによる攻撃にUNRWA職員が関わっていたことなどを理由に国内での活動を禁止した。政府関係者がUNRWAと接触することも禁じたため、パレスチナ自治区などでの人道・医療支援にも困難や危険が伴うことを清田氏は時事通信のインタビュー(1月30日)で語った。
ガザを巡る状況はさらに悪化しているようだ。
米国務省は9日、ガザにおけるイスラエルの行為はジェノサイドに相当すると国連人権理事会に報告した国連の「特別報告者」フランチェスカ・アルバネーゼ氏に対する制裁を発表した。そこには「臆面もなく反ユダヤ主義を吐き出し、テロリズムへの支持を表明」「我が国の国益と主権を脅かすこうした政治的・経済的戦争行為(warfare)を容認しない」といった激しい敵意を示す言葉が並ぶ。
一方、UNRWA事務局長のフィリップ・ラザリーニ氏は11日付の「Ⅹ」で「ガザは子供と飢えた人々の墓場と化した。逃げ場はない。彼らに残された選択肢は二つしかない。飢えか銃撃か。全く罰せられずに殺すという、最も残酷でマキャベリズム的な計画だ」と怒りを込めて語る。
こうした状況で「不作為と沈黙は共犯だ」という同氏の訴えに宗教者はどう答えるべきか。
現実の問題として日本からできることは限られているかもしれない。幾つかの教団、団体が人道支援の資金援助を行ってきた。しかし、ガザの子供、市民を救えという発信は散発的で、世界に向け強く響いているとは言い難い。
深刻な世界的危機のさなか、日本は戦後80年の夏を迎えた。
1~3日にはWCRPと同日本委員会主催の第3回東京平和円卓会議が都内で開かれ、紛争・戦争当事国を含む各国の諸宗教代表が「戦争を拒否し対話を促進するため」話し合った。さらに広島、長崎の原爆忌、終戦記念日や8月4日の比叡山宗教サミットなど平和を考え、世界の良識に向け日本から宗教者の訴えを発信するべき機会がやってくる。宗教の叡智の声を全世界で結集することが今ほど強く求められている時はない。