神社仏閣で平和を願う揮毫イベントを実施する 宮本辰彦氏(60)

世界平和を願い、全国各地の神社仏閣などで書家や高校書道部による平和揮毫イベントを実施する「和プロジェクトTAISHI」の代表を務める。当初はなかなか理解を得られなかった活動だが、平和に対する強い思いと行動力で、次第に賛同者を増やしてきた。
佐藤慎太郎
神社仏閣での平和揮毫が活動の中心ですね。
宮本 日本人の魂に訴えかけるには神社仏閣を会場にするしかない、という思いからです。また書家が大書揮毫する姿には、オーケストラの指揮者が観客を巻き込んでいくのにも似た文化を発信する強い力があります。そして高校書道部にも参加してもらうことで、次世代、若い世代への意識の啓発も図っています。
国連の定めた9月21日の「国際平和デー」に合わせて、靖国神社と全国の護国神社、そして広島・長崎の平和公園で平和揮毫を実施しています。靖国神社や護国神社はいまだ軍国主義のイメージが強いかもしれませんが、祀られている英霊は誰よりも平和を願っていたはずです。また広島と長崎の平和公園とも同時に、共通の趣旨で開催するイベントは珍しいと思います。しかしこれらの場所は、誰よりも平和を願う人たちの心の拠り所であることに変わりはありません。
「十七条憲法」の制定日とされる4月3日には、寺院を中心に行っています。今年は聖徳太子ゆかりの法隆寺や四天王寺をはじめ、宗派の総大本山を含む全国45カ寺にまで広がりました。また各国大使館からの参加もあり、平和のメッセージを母国語で寄せ書きしてもらっています。
とはいえ活動を始めたばかりの頃は、趣旨の説明に伺ってもほとんどのお寺で門前払いのような扱いを受け「あなた、まともじゃないよ」と言われたこともあります。しかし回を重ねて何度も足を運ぶうちに賛同していただけるお寺が増え、時には快く別のお寺を紹介していただけるようにもなりました。
どうして「和」の精神に着目されたのですか。
宮本 終戦から80年が経過しますが、これまで日本で平和が保たれてきた理由について考えたとき、戦争を実際に体験した人の切実な思いこそが結果的に「抑止力」となってきたのだと思っています。
しかし次第にそうした方々がいなくなる中、次の抑止力となるものが求められています。それこそが、日本のあるべき姿、アイデンティティーを示すものとしての「以和為貴(わをもってとうとしとなす)」の精神だと考えました。これは1400…
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