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宗教と文化の専門新聞 創刊1897年
中外日報社「宗教文化講座」

現代日本社会と女性教師(1/2ページ)

國學院大研究開発推進機構日本文化研究所PD研究員 丹羽宣子氏

2021年2月19日 10時02分
にわ・のぶこ氏=1983年生まれ。福島県出身。一橋大大学院社会学研究科博士後期課程修了。専門は宗教社会学。現在、國學院大研究開発推進機構日本文化研究所PD研究員ほか。著書に『〈僧侶らしさ〉と〈女性らしさ〉の宗教社会学―日蓮宗女性僧侶の事例から』(晃洋書房、2019年)。

現代日本社会は大規模な変化の只中にある。人口減少社会の到来や過疎化の進行は寺院の存続に密接に結びつく問題であり、家族構造の変化は儀礼のあり方を変容させ、儀礼典礼を執り行う僧侶の立場を揺るがしかねないものとなっている。仏教教団自体、深刻な後継者不足に直面している。社会の側の仏教不信もある。仏教教団は様々な意味で転換と変革を求められている。「女性活躍」が各宗派で盛んに議論されるのは、次世代の宗門を担う人材としてだけではなく、一般社会と伝統仏教との新たな懸け橋となる役割を女性に期待しているからだろう。ただし、当事者たちが抱える課題の把握、現行の制度や体制の変革なくしては「女性活躍」は付け焼き刃的な代替策でしかない。

この小論では日蓮宗を事例として、女性教師の具体的な姿を提示し、そして女性が僧侶として活躍するにあたり直面せざるを得ない様々な課題について指摘してみたい。

データで見る日蓮宗の女性教師

2019年度版『宗教年鑑』によると日蓮宗の全教師は7932人、男性7045人(88・8%)、女性は887人(11・2%)である。日蓮宗の女性教師比率は他宗派に比べて格段に高いとはいえないものの、代表役員に占める女性の割合は相対的に高い(日蓮宗現代宗教研究所提供データによると20年10月時点で4・9%)。

日蓮宗では04年に「全国日蓮宗女性教師の会」が結成されている。それまでの女性教師の団体が剃髪・非婚の伝統的な尼僧たちによるものに限られていたなかで、大きな出来事であった。19年には浄土宗でも剃髪・非婚を入会条件としない「ふたはたの会」が結成されている。

日蓮宗の女性教師に関するまとまった資料として、02年10月に実施され、04年にその成果が公開された『日蓮宗全女性教師アンケート報告書』がある。アンケート調査は当時の全女性教師1015人を対象に実施され、385人からの回答を得た。データの古さは否めないがこの調査結果を参照しつつ、日蓮宗女性教師の全体的な傾向を見ていこう。

一般的に女性の僧侶は独身であるというイメージを持たれることが多い。しかし日蓮宗に限ってみれば必ずしもそうとはいえない。報告書によると、信行道場入場時の状況として未婚27・2%、既婚者44・1%となっており、結婚経験者は決して少数派とはいえない(死別12・9%、離婚11・1%、無回答4・4%)。信行道場入場時の立場を確認すると、在家の者は43・1%、寺族は30・1%、教師の妻は22・8%(無回答3・9%)となっており、寺院関係者は5割を超える。また信行道場入場の動機では「住職の手助け」「寺の後継」を合わせると43・9%となっており、報告書にも「約半数の人が、お寺を守るために入場しています」とのコメントが添えられている。ここからも住職の妻や娘たちが教師となることは、日蓮宗ではさほど珍しいことではないことがわかるだろう。

なお02年の調査実施時点で、特別信行道場(剃髪)の修了者は172人、補教信行道場(有髪)の修了者は175人(無回答31人)と回答者数はほぼ同数であった。現在は女性の信行道場は剃髪に限られるためこの比率は変化していることは見込まれるが、現在でも有髪の道場を修了した女性教師が多数活躍していることには変わりない。

以上のことから次のことが指摘できる。日蓮宗では家庭生活を営む女性教師は少数派ではなく、住職の妻や娘が教師となることも珍しくない。これは戦後の寺院救済措置として寺庭婦人を有髪のまま教師として養成する補教制度が1950年に成立していたことも関係するだろう。戦後の日蓮宗には、尼僧法団による尼衆宗学林復興など高度な宗教的職能者として女性を養成する制度を求める動きがあった。その同時期に、戦争等で住職を失った寺院の救済策である補教制度も整えられていく。戦後の日蓮宗の女性教師養成は、このような二つの制度が併存していたことに特徴がある。2002年の宗制改正によって補教信行道場は廃止されたが、有髪の道場の存在は住職未亡人だけではなく、幅広く女性の出家を支える制度として機能してきた。現代の日蓮宗には多様な女性教師の姿を見ることができる。

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