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宗教と文化の専門新聞 創刊1897年
中外日報社「宗教文化講座」

《新年座談会①》コロナ後、社会・宗教どう変わる?― グローバリズムの果てに危機(2/2ページ)

 安藤礼二氏

 中島岳志氏

 釈徹宗氏

2022年1月7日 15時48分

100年前に起こったのと同様のことが改めて今起こりつつあると思います。しかも規模を拡大しながら。不幸にも関東大震災に匹敵するような東日本大震災が起こりました。スペイン風邪を生んだ100年前のグローバリズムの行き着く果てがコロナではないか。急激に世界が一つになり、それまで無関係だった様々な領域がつながり合い、それが種を超え、人間と動物の距離が縮まることでこのような感染症が起こってきたと思えます。

100年前、危機にあらがうような形で大拙や西田、折口、また南方熊楠(1867~1941)、柳田國男(1875~1962)らが表現を開始しました。柳田や折口の民俗学は生者だけでなく、死者も含めたネットワークの再構築を考えています。大拙や西田の仏教的な哲学は、人間を特別視せず、森羅万象の関係性の中で初めて新しい主体が立ち上がってくる哲学です。100年前にグローバリズムにあらがった人たちが残したのは人間、自然、社会の再検討だったと思います。それをもう一度創造的に反復することで、ポストコロナの時代に見えてくるものがあると考えています。

 カミュの『ペスト』が世界的に随分読まれて、日本でも70年ぶりに新しい翻訳が出ました。東日本大震災の時も『方丈記』が随分読まれて増刷されたと言います。『方丈記』の増刷とは面白いと思いますが、考えれば日本初の災害文学ともいえる内容です。

つまり人間というのは危機状況になると先人の知恵に耳を傾けるところがあるのかなと思いますし、それは大変正しい真っ当な態度だと思います。後ほどこの「グローバリズムの危機」と「死者も含めて我々の在り方を考える」という論点を練っていきますが、その前に中島さんからお話を伺います。

中島 安藤さんが問われた「コロナとはいったい何なのか」。人間のあまりにもアグレッシブな自然に対する態度、環境破壊やその背景にあるグローバル資本主義ですね。世界中の森を切り開いていった。その背景にはアグリビジネスがあり、畜産業の大規模なビジネスがあり、それを欲している先進国の人間がいる。どんどん自然を破壊していった結果、野生動物と人間の距離が縮まってしまった。

これまではコウモリのような野生動物の中にいたウイルスが次々と人間に乗り換えている。人間はウイルスにとってありがたい存在で、口角泡を飛ばして交流し、世界中を飛び回ってくれる最もいい乗り物ですね。「ウイルスの引っ越し」を引き起こしているのは我々なのです。

「そろそろコロナも終わる。普通に戻れる」と言いますが、次々に別のウイルスがやってくる時代でしょう。「もうちょっとで戻れる」ではなく、戻ろうとする前の世界に問題はなかったのかを考えるべきだと思います。戻ったところでどうなるのか。そういう視点に立ったとき、自分に大きく迫ってきたのが宗教の問題です。

去年の春、ステイホームで行動範囲が狭まりました。子供と近所を散歩すると「お母さんに持って帰る」と子供がタンポポを摘みました。それをコップに入れて食卓に飾っていると、夜にしゅーっと閉じて朝開く。その繰り返しを見ていると涙が出そうなほど感動しました。それが曼荼羅に見えたのですね。ぱーっと開いた瞬間は大日如来が真ん中からスプレッドしてくる姿のように見えました。それで、これまで注目してこなかった空海を読み始めたのです。

これまで私は真宗の親鸞に大きな影響を受け、勝手な解釈で読んできましたが「自然と私たち」の問題について、より深い考察は親鸞では難しい。親鸞は死後浄土を考えていて、現世で自然と一体化することへのある種の警戒心を持っている思想家、宗教者だと思いますが、空海はそういう世界を語れるという。その世界とは一体何なのかと、私は空海の世界に入り込んでいきました。

聖武天皇の大仏建立の詔が素晴らしいと思います。疫病が起きた時に彼は仏像を造ろうと。しかもそれは人類のためでなく、生類のためだといいます。生きとし生けるものの幸福をどう包み込むのか。そこから考えようとするとき、奈良時代、平安時代の思想が私にリアルに迫ってきました。(つづく)

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