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《新年座談会②》コロナ後、社会・宗教どう変わる?― グローバリズムの果てに危機(1/2ページ)

 安藤礼二氏

 中島岳志氏

 釈徹宗氏

2022年1月8日 09時15分

 国連でSDGs(持続可能な開発目標)が課題として提出されたように、「人間の過剰さ」は考え直すべき問題として多くの人々に共有されていると思います。生態系から逸脱するほどの過剰さを人間が持ち合わせている。そこに人間ならではの喜びもあるでしょうが、苦しみの根源もある。そことどう付き合うのか。おそらく人類のテーマとしてはるか昔からあったのでしょう。

考えると、仏教もその問題に取り組む手だての体系といえるかもしれません。華厳思想などはこれから人類に大きく寄与するなという予感がします。この20年でサーズ、マーズ、コロナと大体7年に1度ぐらいの割合で感染症のパンデミックが起こっていて、我々の社会を考え直さなくてはいけないと思います。

コロナを機縁としてどう社会を変えていくのかというトピックスの前に、まず安藤さんから出た「グローバリズム」の問題があります。もちろん避けられないところもありますし、その恩恵もありますが、様々な問題を含んでいる。コロナで見えてきたグローバリズムが抱える危うさ、欠点・弱点を中島さんはどうお考えですか。

中島 最初に釈先生がスピードのお話、安藤先生が100年前というお話をされましたが、その交点にインドのガンジー(1869~1948)がいると考えました。1910年頃に彼が書いた『ヒンドゥー・スワラージ』で、彼は「鉄道なんて要らない」と言うのですね。「鉄道は速すぎる」と。

どういうことか。鉄道はまず欲望を喚起する。近隣の人たちに分け与えていた農作物を、高く売れるところへスピードに乗せて売ろうとする。鉄道によって欲望が蔓延し、これにかき立てられる人間が生まれてしまうと。どんどんグローバル化し、遠いところに物が運べることで隣人に対する原理を失っていく。だから鉄道なんか要らない。と言いながら彼は鉄道でインド中、回っていましたけどね。

彼が面白いのは、「農閑期が重要だ」と二毛作にも反対しています。農閑期にゆっくりいろんなことを支度したり、糸車を回したりすることが人間の安定的な生活には重要だと。だから近代は速すぎる。「よいものはカタツムリのように進むのです」と彼は言いますが、スピードに乗せられてきた人類を批判的に見たのも100年前の世界だったと思います。今は「スピード感」が何でも良いこととされ、政治の世界でも「スピード感、スピード感」といいますが、それにあらがうような力、力学が私たちに必要ではないでしょうか。

 本当ですね。林業の人とお話ししていると「我々が今暮らしていけるのは、おじいちゃん、ひいおじいちゃんが植えてくれた木のおかげなんです。だから我々は孫、曽孫の世代のために今、木を植えるんです」と、本当に長い時間の中で生きている。ところが株式会社の決算が四半期に1度になるなど、すごく縮んだ時間の中で生きているわけです。

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