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宗教と文化の専門新聞 創刊1897年
中外日報社「宗教文化講座」

宗教2世問題を考える(1/2ページ)

天理大おやさと研究所教授 金子昭氏

2022年9月6日 09時53分
かねこ・あきら氏=1961年生まれ。慶応義塾大大学院博士課程修了。博士(哲学)。専門は宗教倫理学、宗教人間論研究。著書に『驚異の仏教ボランティア』『現代における宗教批判の克服学』など。

安倍元首相銃撃事件の背景には、旧統一教会(世界平和統一家庭連合)の存在があることが明らかになった。この事件は、もしかしたら1995年の一連のオウム真理教事件(以下オウム事件)以上に、宗教教団全体に対する逆風となるかもしれない。この逆風は、オウム事件の時とは異なり、教団外部からだけでなく、教団内部からも吹き荒れる恐れがある。今後、舵取りを誤れば、宗教教団は大きな苦境に立たされることになろう。問題の核心にあるのは、いわゆる宗教2世の問題だ。本稿ではこの問題に焦点を当てて、信仰継承のあり方及び教団宗教の再生について考えたい。

オウム事件以上の逆風

今回の事件がオウム事件以上の影響を与える理由として、およそ3点挙げられる。

第1に、オウム事件の時は、日本社会が宗教教団全体への批判に向かいかねなかったが、この事件は明らかに逸脱したカルト教団による野蛮なテロリズムの所業であり、そうした批判を回避させることが比較的容易だった。しかし、今回の事件は、元凶は旧統一教会というカルト教団であるにせよ、政治との距離感についてや教団内での奉仕・献金の問題はどの宗教教団にも多かれ少なかれ存在するものであり、その点を突かれると、教団宗教バッシングを逸らせることは極めて難しい。

第2に、オウム事件の時は、それでも確かに外部(一般社会)からの逆風が強かったが、逆に各宗教教団は教団内部で団結して自己防衛に努めることができた。しかし、今回の事件では、むしろ内部からの告発、突き上げの声も大きく、教団内の指導層と信徒側とでの亀裂が引き起こされかねない状況である。とくに献金の負担という微妙な問題が顕在化すれば、これを機にどの教団も相当な献金・お供え減となり得る可能性があり、教団の縮小ひいては存続の危機に立たされるところも出てくるだろう。

第3に、オウム事件の時はまだ今日のようなネット社会ではなく、教団本部が教団内の情報を比較的統制しやすかった。いわゆる宗教2世の問題を含めた教団内の不満もあまり表面化しなかった。しかし、今回の事件では、SNSの普及によって従来のような情報の上意下達というわけにはいかなくなり、プラスの情報もマイナスの情報も同じように拡散している。人々の耳目を惹きやすいのは、内部告発のようなマイナス情報であり、これが教団の屋台骨を揺るがしかねない。

しかし逆に言えば、この事件を奇禍として宗教2世たちの声が大きく教団内外に届くようになり、それが内発的な自己改革へとつながるという期待も出てきたことだ。これまでの教団のあり方に風穴を開け、風通しの良い教団運営ができるようになれば、旧統一教会問題はどの教団にとっても「他山の石」となる。

実は古くて新しい問題

上述のことから見えてくるのは、宗教教団の内部問題である。カルト教団は家族全員での信仰を盾に取り、家族全体を閉ざされた関係性へと閉じ込めてしまう。旧統一教会は、家庭の団欒や平和を第一義に掲げながら、その実、過度な献金や奉仕のために家庭を犠牲にし、家庭を破壊してきた。家庭の団欒は言説ではなく、実態で評価すべきである。家族間で自ずと醸し出されるのが本物の団欒であり平和である。本来、神仏は超越的視座から人間関係を開かれた関係性へともたらす存在であることを、宗教者は常に心に銘記しておかなければならない。

宗教による家庭の過度な囲い込みに対して異を唱える。これが宗教2世問題である。巷間では、カルト教団の宗教2世問題ばかりがクローズアップされているが、この問題はもともと「家の宗教」化に伴う問題として、どの宗教教団にも共通する古くて新しい問題である。

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