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2024宗教文化講座

悲しみへの共鳴から 自然体の“グリーフケア”(1月19日付)

2024年1月24日 09時37分

宮城県南三陸町の民宿「未希の家」は、東日本大震災当時、警報発令下に町職員として防災対策庁舎から最後まで町内無線で住民に避難を呼び掛けながら建物をのみ込んだ巨大津波によって同僚と共に亡くなった遠藤未希さん=当時(24)=の母・美恵子さん(65)が営む。この娘への思いがこもった宿は今、そこを訪れる悲しみを抱える多くの人たちにとって自然体の癒やし、ケアの場になっている。

未希さんは当時、世帯を持って間がなく、母娘は前日に半年後の披露宴でのドレスの相談をしたばかり。突然に襲った惨劇に美恵子さんは希望を失ったが、「何かしていないと生きていく気が起きない」との思いで3年後に開業した。高台に建てたこぢんまりした宿は「娘が戻ってくるわけではないけど、せめてもの供養に」と母が切り盛りし、全国から来訪がある。

1日に1組と決めた宿泊客には、母は未希さんのことを「問われれば話す」ようにしているが、今も涙で詰まることが多い。各地からの客には事情を知らない人ももちろんいるが、食堂に飾られた未希さんの似顔絵を見て尋ねることもよくある。美恵子さんは決して震災の「語り部」ではなく、あくまで自分の家族を襲った理不尽な出来事を振り返り、思いを言葉にするだけだ。

だが、その「母の語り」を聴いて大切なものを失った心の痛み、悲しみや苦しみに共感、いや共鳴するのだろうか、自分のつらい体験を話す客が増えてきたという。決して「傾聴」などという洗練されたものではないが、自らの悲しみをぽつぽつ口に出す人に美恵子さんはうんうんと相づちを打つ。

「ほかにお客がおらず気持ちがゆっくりするのと、他人だから話しやすいのでしょうか」という。

遠方から何度か訪れた初老の客は、身内が不慮の死を遂げた上に、長年連れ添った配偶者と死別した。当初、美恵子さんに対して「しんどいのはあなただけじゃない」という姿勢だったが、ある時、その配偶者のことを切々と訴え、声を上げて泣きだした。美恵子さんはやはりうなずき、じっくり聴いた。「ただ傍にいるだけ」だったが、このような人たちには大きな安らぎになることだろう。

背景には、美恵子さん自身、地域で多くの犠牲者が出ている中で自らの娘のことについて胸の内を誰かに聴いてもらうことがずっとはばかられたという経験がある。同様の「悲嘆の共鳴」は被災地のほかの場所でも耳にする。そこでは、いのちへの共通の深い思いが互いの自然な支え合いを生んでいるのだといえよう。

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