日本初の月面着陸 宇宙開発は平和のために(1月26日付)
宇宙航空研究開発機構(JAXA)はこのたび、無人探査機「SLIM(スリム)」による日本初の月面着陸に成功した。ただ、記者会見に臨んだ同機構理事長らの顔はいずれも固い表情だった。それは探査機が月面着陸後、太陽電池が作動せず、電力が切れかかっていることが判明したためである。報道陣の質問もそこに集中した。
だが、月面着陸に無事成功し、しかも目標地点から100㍍以内でピンポイント着陸ができたということだから、そこは大いに拍手を送りたい。月面着陸は世界で5番目だが、この技術は日本独自の最先端技術だ。
太陽電池が作動しない原因は、電池パネルに太陽光が当たる姿勢になっていなかったからだという。だから太陽の傾きが変化し、光がパネルに再照射すれば、電源が復旧する可能性はある。最高度の技術を駆使した月探査においても、肝腎なところで太陽光を必要とし、その恵みと力を受けるためには、日射方向が変わって、光がパネルにうまく当たってくれることを待たなければならない。
太陽は無限なエネルギーの源であり、この力がいかに偉大なものであるかを再認識させられた出来事だった。一方、太陽の恵みと力を利用して月探査を行おうとする人類の技術力の進歩にも、私たちは感嘆の声を惜しまない。問題はこれを何のために用いるかである。国連の宇宙条約では、月を含めた天体の平和利用を定めているが、現実には各国の軍事偵察衛星が地球の周囲を飛び交っている。
しかし、日本の宇宙開発は一貫して平和利用の路線で進んできた。今回のピンポイント月面着陸成功により、そうした姿勢に改めて国際的な注目が当たることを期待したい。その意味でも、JAXAはもっと喜んでよいところである。
各国は宇宙開発にしのぎを削っているが、月に国境線を引いたり、地下資源を占有したり、ましてや軍事基地を設置したりするようなことがあってはならない。月探査による恩恵は全ての人々に与えられるものである。人類の救済、世界の平和のための宗教の叡智に国境は存在しない。21世紀の科学技術の時代だからこそ、この叡智に学ぶべきではないだろうか。それならば日本の宗教者も何らかの貢献ができるはずだ。
今回の成功は日本の高度な宇宙工学技術の成果を示した。これが今後の宇宙開発における科学技術面での寄与となる。それと合わせて日本ならではの平和利用の精神が世界の宇宙開発に良い影響を与えていくことを願ってやまない。