災害支援と宗教者 本来の宗教活動の一環(1月31日付)
元日の能登半島地震では200人を超す方々が亡くなり、家屋の倒壊や損壊、津波や火災、水道が使えない、道路が通れない、さらに雪や寒さが襲うという状況で、数万人が避難生活を余儀なくされている。亡くなった方々のご冥福を祈るとともに、遺族の方々、また、様々な困難を抱えている方々への支援が進み、早く落ち着いた生活に立ち戻っていかれることを願わずにはいられない。
この災害では支援活動も進めるのが容易ではない。被災の中心は山の多い半島で、地震による断層のずれが大きく、さらには雪の多い寒い気候ということもあり、支援者が現地に赴くことをすぐには勧められない事情もあった。そうした中で、宗教者・宗教団体の支援活動は早くから進められている。仏教各宗派、神社界、キリスト教会などでは、寺院や神社らの支援に早くから取り組み、併せて周辺地域と住民への支援を継続的に進めている例がある。
天理教の災害救援ひのきしん隊、真如苑のSeRV(真如苑救援ボランティア)、曹洞宗と縁が深いシャンティ国際ボランティア会、カトリック教会のカリタスジャパン、プロテスタント教会が基盤にある神戸国際支縁機構などは早くから支援活動に取り組んでいる。
このような宗教者・宗教団体による災害支援活動は1995年の阪神・淡路大震災から広く行われるようになる兆しがあったが、その後、2004年の新潟県中越地震、07年の能登半島地震などを経て次第に広がりと深まりを見せ、11年の東日本大震災でさらに広がり、メディアでも取り上げられ注目される機会が増えてきた。
そこでは、宗教や宗派を超えて支援のために協働する形が広がってきている。臨床宗教師会や宗教者災害支援連絡会といった組織もでき、ヨコのつながりが発展してきている。宗教や宗派を超えた支援活動があることで、医療界や行政機関からも協力関係がつくりやすいとして歓迎されている。
こうした宗教者・宗教団体による災害支援活動は全く新しいものではない。奈良時代の行基や空海の例に見られるように、災害や疫病などで苦しむ人々を宗教者が助ける事例は日本でも古来あった。そもそも日本の仏教が葬祭で大きな役割を果たすようになったのも、死者を弔う方途を求めていた古代後期以来の人々の求めに応じたという由来がある。宗教者による災害支援への貢献は本来の宗教活動とは異質な何かというより、人々の苦難に寄り添い、精神の平安へと誘うという点で本来の宗教活動の一端と見るべきだろう。