温暖化解決への道 気候問題に関与する宗教(2月2日付)
アラブ首長国連邦(UAE)のドバイで昨年11月30日から12月13日まで開催された第28回国連気候変動枠組み条約締結国会議(COP28)には締結国198カ国などが参加し、日本からは岸田文雄首相が首脳級会合に出席。我が国の気候変動対策を紹介する日本パビリオンも現地に設けられた。
バチカンの教皇フランシスコは2015年の回勅「ラウダート・シ」以来、環境問題について積極的に発言しているが、COP28を前に環境問題に関する「使徒的勧告」を発表した。ドバイでの会議に先立って11月上旬には、同じUAEのアブダビで「気候変動対策に関する世界宗教指導者サミット」が開催されている。イスラム長老評議会の主催で、各宗教の代表が出席し、「アブダビ宗教間声明」をまとめた。サミットの成果を踏まえ、COP28に宗教者パビリオンを初めて設けることになった。
期待されたCOP28だが、化石燃料との決別を強く宣言するには至らず、世界の平均気温上昇を産業革命以前に比べて1・5度以下に抑えるというパリ協定(15年)の目標に向けて順調には進んでいない(オントラックではない)ことが、残念ながら確認された。
資源エネルギー庁ウェブサイトのリポート(23年12月28日)によると、COP28の決定文書では、温室効果ガス排出削減のため、世界全体で30年までに再生可能エネルギー発電容量を3倍に、省エネ改善率を2倍にすることを目指し、化石燃料から再エネ、原子力等への移行を進めることなどが明記された。
気になるのは、原子力発電への依存度拡大が気候変動対策の重要な柱になりそうな点。COP28では、50年までに原子力発電能力を3倍にするというアメリカ提案に日本など22カ国が賛同した。
米国提案の背景には、化石燃料に依存して維持している快適な生活スタイルを変えたくないという発想がある。
福島第1、チェルノブイリなどの深刻な事故や使用済核燃料処理といった難題をよそに、原発拡大を唱えるところには「今さえ良ければ」のエゴが露骨に現れる。問われているのは単に電力確保の技術的問題だけではなく、我々自身の生活のスタイル、生き方の問題でもあるのだ。
その意味でも、COP28で宗教指導者サミットや宗教パビリオンの開設など、温暖化対策への宗教者の関与をアピールする動きがあったことは注目したい。宗教者自らさらに積極的に発言をしてゆくべきだろう。