寺の後継者問題 進む格差と女性の進出(2月7日付)
人口の都市集中による過疎化と少子高齢化の進行が我が国の仏教界に寺院消滅と後継者不足の二重苦を与え、従来通りの寺院運営を困難にしている。そのことを裏付けるように、曹洞宗は過去20年間で年間得度者が半減したとの衝撃的な調査結果を公表した。後継者難への対応にも変化が見られ、これまで息子のいない寺院は男子を養子に迎え、また婿取りで後継者を確保するのが通例だったが、今日では寺で生まれた娘が後継ぎを目指して教師資格を取得するケースが増えている。
人口減による深刻な人手不足を乗り切るためには省人化による社会・経済システムの再構築しかなく、ロボットやAIの出動はもとより、あらゆる部門でテクノロジーを駆使する努力が求められ、外国人労働者の受け入れも避けて通れない選択肢になると指摘されている。だが、寺の後継ぎをロボットやAIで代替するわけにはいかないし、できるわけもない。
日蓮宗の現代宗教研究所が行った女性教師アンケートでは、20代で度牒(出家得度の証明書)を受けた人が前回調査と比べ全体の13%から22%に増加したとの結果である。出家動機の55%が「寺の後継」であり、婿取りにこだわらず自ら住職になろうとする寺の女性が増えていることを示すものだ。他宗派でも寺に生まれた女子の尼僧志願や僧侶養成コースのある宗門大学への進学を志望する者が増えている。一方、修行僧が減って僧堂を閉じた曹洞宗富山専門尼僧堂の堂長は「これからは男女同安居で修行するのが良いのではないか」と語っており、尼僧を含め僧侶養成の前途は厳しい。
後継者問題は経済事情とも深く関係している。安定した寺院運営ができるのは3割程度で、多くは法務や檀務だけで生活を維持することは難しいといわれている。やむなく兼職せざるを得ないのが実情だが、兼職事例として一般的な教員や、そのほかの職業でも、法務や僧侶資格の取得を理由に、まとまった期間職場を離れ、休職するのは難しい現実がある。
地方寺院の住職は「息子がこの寺を継いでも生活はできない。私の代で世襲をやめると言えばいつでも終わる」と語っている。地域に歴史を刻んだ寺の存続は住職の一存で決められる話ではない。空き寺となれば維持管理の問題も残る。大きく見れば寺院間の地域格差、経済格差の問題であり、現実的には女性僧侶の活躍という課題にどう対処するかが問われている。道を開くためには、男性優先の僧侶養成システムの改善は避けては通れないだろう。