災害時に即応する体制 教団のネットワークを活用(2月16日付)
宗教教団、特に伝統仏教は全国レベルの組織を持ち、能登半島地震でもそうであったように、災害時にそれを活用することは大きな意義がある。福島県いわき市・阿弥陀寺の馬目一浩副住職らが目指す「浄土宗災害支援ネットワーク」構築はまさにそれで、東日本大震災やその後の災害での豊富な経験と教訓を踏まえて、非常時に迅速な対応ができる人材育成と組織整備を進める。
馬目副住職は「被災地で支援の中心的役割を果たすのはその地の被災者であることが多く、それは大きな負担なので外部からの迅速なサポートが不可欠」と指摘。浄土宗ともいき財団の助成も受け、宗内各地で「災害支援アドバイザー」となる僧侶養成に取り組む。
平時には各地の有志の僧侶や寺族と定期的に研究会や情報交換を実施し、防災専門家を講師に行政などとの連携も視野に入れた研修会も開いた。メンバーが自坊で防災備蓄を進め、各地の実際の災害時に現地調査と支援を行うなど実行力も身に付けている。能登半島地震でもそれが成果を生んだ。
背景には、震災での復興支援と仮設住宅での訪問傾聴サロンなどの蓄積があり、2019年の台風被害を機に地元のNPOや社会福祉協議会、各種団体と連携して情報共有と防災対応を充実するために「災害支援ネットワークIwaki」を率先して組織し、水害などでも即応の実動部隊として活発に活動した積み重ねがある。
「普段していないことは非常時にもできない。経験と幅広い連携・協力、そして万全の準備が防災の鍵」と言い、今後は宗内全体に定着させていきたい考え。災害時に全国規模の寺院と僧侶の連携網を生かせば素早く的確な支援につなげることができ、直ちに被災状況を確認し、災害の規模により必要な資材・食料・人的支援を話し合い、早期に適切な支援を被災地の周辺から行うことが可能になるという。
例えば各寺院で備蓄していると他地域で発災した際にそれを集めればまとまった支援物資となるが、それを事前に把握していなければ使いようがなく、管理し状況を判断できるスキルを持つ人材が決め手になる。
「過去の災害でも寺は地域のランドマークとして避難所になり、傾聴などで僧侶への期待があることを実感する。命と心の拠り所の寺院を管理する我々は、災害が頻発する時代にその期待に応える努力をしなければいけない」と語る副住職は、大規模災害時に社会の期待に対して何が行えるか仏教界が試されていると考えている。