寺の護持環境悪化 法灯を護る人材育成を (3月27日付)
「得度者が過去20年間で半減した」という曹洞宗宗務庁の運営企画室が発表した調査報告(本紙1月24日付)は反響を呼んだ。寺院の後継者難は伝統仏教の多くの宗派が共通して抱える悩みで、同様の調査を実施すれば大差のない結果が示されるのではないか。
調査によると、減り続けている日本の人口を上回る速度で減少し、中でも10~30代の若い世代の減り方が深刻だという。とりわけ、檀家数など経済的基盤が弱いとみられる寺院に在籍する若手僧侶の減少が顕著だとする指摘もなされている。住職になっても他の職業を兼職して寺院の護持や寺族を扶養する収入を得なければならないとすれば、周囲の人々も得度を強くは勧められないだろう。
同じく曹洞宗による「僧侶という職業を選択した理由」の調査の結果(本紙3月8日付)もいろいろと考えさせられる。
対象は10~30代の安居経験者で、昔風に言えば「出家の動機」を問うたものだが、やはりというべきか「自分以外にお寺を継ぐ人がいない」「お寺を廃寺にしたくない」という「義務」を自覚する回答が多く(「そう思う」「どちらかといえばそう思う」を合わせて6割強)で、寺の家業化を裏付けるものだった。それに対し「仏教を広めたい」は「どちらかと言えば」を含め4割弱、「修行に興味や憧れがあった」は同じく2割以下にとどまった。
もちろん、これは僧侶として入り口に立った時点のデータであり、修行の深化や仏教者としての活動を通じて当然考えも変わってゆくと思われる。しかし、寺を継がねばならないという自己犠牲意識は経済的基盤が悪化すれば壁にぶつかるのは当然だ。急激に進む社会環境の変化に宗門が対応できないとしても、負担ばかりが増加する「自己犠牲」だけに頼るわけにはいかない。一定の後継者減=寺院減は甘んじて受け入れて、宗派の未来像を再設計する覚悟も必要ではないか。
その中で特に強く意識されなければならないのは法灯、信仰の継承だ。たとえ多くはなくとも、次代の宗門を担う人々を育てる環境を整えるのはいつの時も課題であり続ける。例えば、禅仏教では「一個半個」ということがいわれるが、専門道場が一個半個を打出する修行環境を維持できているか。もし否ならば、大きな改革も避けるべきではない。また、一般に宗門大学における仏教学、宗学の学部・学科の充実は経済的理由を超えて宗門にとって重要であることも言うまでもないだろう。人材育成には一層配慮すべきだ。