『虚構新聞』20周年 機知による風刺の力(5月1日付)
インターネットで人気を博し、テレビでも何度も取り上げられた完全パロディーメディア『虚構新聞』の創刊20周年を記念した展覧会が先頃開かれた。自ら「全てフェイクニュース」と宣言し、手の込んだ作りで世相や政治などをチクリと風刺する内容で、正体を伏せた「UK」社主が2004年に発刊。いろんな分野で機知に富んだ千本以上の「ニュース」をメルマガやサイト、紙媒体で発信し続け、根強いファンがいる。
最近の見出しだけを見ても、経済面では「社内トイレも電子化 『ペーパーレス』で経費節減」「数学教科書から“x”消える 米起業家が独占使用権獲得」。スポーツや国際面でも「打撃0・2秒前にHR予測 『緊急大谷速報』配信へ」「エジプトでミイラ取りのミイラ発見」など。
出色は政治・経済関連で「最優秀喜劇賞に『国会審議』 全日本喜劇アカデミー発表」「次の首相、1位は『ネコ』 9割超える支持 世論調査」「政界で『どんど焼き』ブーム 永田町でも壮大火柱」「『自宅宿泊税導入を』 公租劫略調査会が答申」「フレーム・レンズにデンプン素材 『減税メガネ』発表」等々。
記事はデータも書き込まれ、本物と見まごう写真も付いており、一見他愛ない笑いから社会の様々な問題を考えさせられる。フェイクが現実になった際に掲載される“お詫びと訂正”も興味深い。コロナ禍で「2㍍のロングバトンも 新しい運動会」の記事の後に、神奈川県の小学校で実際に2㍍のバトンを使ったリレー競争が行われたことが判明した。虚構を超える現実のおかしさを再認識する。
世相風刺といえば明治期に発行された『滑稽新聞』を想起する。政府をこき下ろした反骨のジャーナリスト宮武外骨は、これで5回も投獄されながら「本領は、強者を挫いて弱者を扶け、悪者に反抗して善者の味方とするもの」とし、紙面に「威武に屈せず富貴に淫せず」と掲げて闘い続けた。
風刺とは。A・ビアス著『悪魔の辞典』には「作家の敵の悪徳や愚行が、完全無欠とまではいかないまでも優しく説明された今日では廃れた文学作品の一種。…(それが弱体化したのは)その真髄である機知に我々は悲しいほど欠けており、我々が機知と勘違いしているユーモアは…寛大であり、また憐憫の情に富んでいるからだ」と痛烈な皮肉が書かれている。
ただユーモラスなのではなく、ピリッと批判精神が効いているのが肝要だ。宗教者の法話もただ「面白い」だけでは足りないのは同じことだろう。